賢者の知恵
2013年01月01日(火) 村山斉

村山斉「宇宙になぜ我々が存在するのか」 第1回
最新素粒子物理学で解く「宇宙と私の謎」

1月17日発売の最新刊を先行公開

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私たちは星のかけらからできています。
では、その星たちは何からできているのでしょうか。


 私たちの体は物質でできています。それだけでなく、身のまわりにあるもの、地球、太陽などの恒星も物質によってできています。いわば、私たちは物質に囲まれて生きているわけです。この物質を細かく分けていくと原子に行きつきます。原子(アトム)とは、古代ギリシャに考えられていたアトモスに由来する言葉です。このアトモスというのはこれ以上分割することのできないものという意味で、原子が発見されたときは、物質をつくっている根源的な粒子という意味で、原子という名前がついたのです。

 でも、原子が根源的な粒子でないことはいずれ明らかになりました。原子を調べていくと、プラスの電気をもった原子核とマイナスの電気をもった電子で構成されていることがわかってきたからです。さらに調べていくと、原子核は陽子と中性子からできていて、その陽子と中性子はそれぞれ、三つのクォークでできていることがわかりました。

 その他にも、この宇宙をつくっている素粒子がいくつも見つかっています。

 このようにたくさんの素粒子の存在が明らかになってきたのと同時に、どんな物質にも、必ずそれに対応する反物質があるということもわかってきました。原子の中には電子や陽子などがありますが、そのような粒子にも必ず反物質があるのです。

 反物質は一九三二年に発見されました。アメリカの物理学者アンダーソンが宇宙線の中で見つけたのです。人類が初めて反物質をつくったのは一九三三年のことで、マリー・キュリーの娘夫婦であるジョリオ=キュリー夫妻が、電子の反物質である陽電子を生みだしました。そして、一九五五年にはカリフォルニア大学バークレー校で、大きな素粒子加速器を使って陽子の反物質である反陽子をつくることに成功しました。

『宇宙になぜ我々が存在するのか』
著者:村山斉
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 現在の素粒子理論によると、物質は、必ずその物質と対(つい)になる反物質と一緒に生まれます。

 これを対生成といいます。そして、物質と対になっている反物質が出合うと対消滅という現象が起こり、物質も反物質も消滅してしまいます。ただ、物質としては消滅してしまいますが、消えてしまった後には、物質と反物質の重さの分だけエネルギーができます。つまり、対消滅は物質や反物質の重さがエネルギーに変化する現象といえます。さらに、対消滅で生まれたエネルギーから、別の物質とその反物質のペアが生まれて、変化していくのです。

 物質と対になる反物質は必ず同じ重さですが、電気の性質が逆になります。物質がプラスだったら反物質はマイナスという感じです。私たちは、自分で自分の顔を見ることができません。お化粧するときなどは鏡を使って自分の顔を見ますが、鏡に映る顔は厳密にいうと、自分の顔そのものではありません。左右が反対になっているから、よく似ていますが、別のものということになります。

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