有名人の主治医が語る「命を救った治療」~理想の医師とはいったい何だろうか。著名人5人が全幅の信頼を置く名医が、その治療法と信念を余すところなく明かした。

2013年01月04日(金) フライデー

フライデー賢者の知恵

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芝田山親方の睡眠時無呼吸症候群
理解を求めて寄り添い続けた〝戦友〟

穏やかな語り口調が印象的な吉澤医師。芝田山親方は、吉澤医師にとって第1号のSAS患者となった

 つらくない病気はないが、それが病気であることを知らない状態に置かれることは、ある意味もっと残酷だ。 

 大相撲・元横綱大乃国の芝田山康親方(50)もその経験を持つ一人。睡眠時無呼吸症候群(SAS)であることを知らずに原因不明の症状に悩まされていたのだ。

 彼がSASと診断されたのは'88年。横綱昇進直後から不調が続き、初場所を途中休場して日本大学医学部附属板橋病院に入院する。当時同院の呼吸器内科に勤務し、現在は東京・豊島区の要町病院院長を務める吉澤孝之医師が語る。

「最初は肝臓疾患と診断されたのですが、どうもそれだけが原因ではないということになったそうです。本人は『夜に何度も目が覚めてよく眠れず、日中に眠くて仕方がない』と訴えていた。そこで、当時海外で注目され始めたSASの研究に取り組んでいた私に依頼が来たのです」

 SASは、肥満や顔の骨格の問題から睡眠中の呼吸が断続的に止まる病気だ。熟睡できないため日中強烈な眠気に襲われるだけでなく、内臓にダメージを与え、突然死のリスクを大幅に高める。今でこそ認知度が高まったが、当時は医師でさえほとんどその存在を知らなかった。

 世間にこの病名が広まったのは'03年。山陽新幹線の事故がきっかけだった。SASによる強烈な眠気で運転士が運転中に居眠りをし、自動列車制御装置が作動して緊急停止した事故だ。

「横綱の話を聞くと、ことごとくSASの特徴に当てはまったため、睡眠中の呼吸状態を調べてみたら、1時間に60回以上も呼吸が止まっていたんです。現在の基準では1時間当たり5回以上の呼吸停止や低呼吸があればSASと診断されることからも、横綱がいかに重症だったかが分かるでしょう」

 治療法は当時も今も変わらない。空気を鼻から強制的に送り込むシーパップという機械を装着して寝る方法だ。今でこそ健康保険でレンタルできるが、当時は保険の適用範囲ではなく、横綱は1台約30万円の機械を購入したという。

 効果はてきめんで、シーパップによって睡眠中の呼吸が確保されてからは、身体が引き締まり、相撲の調子も上向いた。

 しかし、病状が良くなるにつれ、横綱は次第に痩せていった。病気を理解していない周囲から痩せたことを非難されていた彼を、吉澤医師は励ましたという。

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