〝IQ豪腕〟福谷浩司(慶大理工→中日ドラ1)の卒論は「球の見づらさ研究」だって

「本研究ではサムプロダクト関数を用いて、(中略)変数セルを係数、目的セルを自乗誤差の和に設定し---」

 12月6日、横浜市内のイベントホール。高等数学に通じていない人間にはチンプンカンプンな用語を駆使して「投球動作における球の出所の見づらさの定量化」なる卒業研究をプレゼンする壇上の青年。182cm90kgと体格こそ堂々たる体育会系だが、喋りには品があり、どことなくノーベル賞受賞者の山中伸弥教授を思わせる。慶大理工学部電子工学科4年生にして、10月のドラフト会議で中日から1位指名された福谷浩司投手(21)だ。

 出身高校は愛知県内でも有数の進学校として知られる県立横須賀高校。野球部のチームメイトが当時をふり返る。

「うちの高校は県大会1回戦突破がやっとの弱小校。エースの福谷にしてみたら、打たせて取ろうにも守備はエラー連発、打線の援護も期待できない。僕らが今でも申し訳なく思うぐらいなのに、あいつは絶対ふて腐れたりはしなかった」

 齢71の中日・髙木守道監督もドラフト後に対面した際には「頭のほうがイケるっていうのは良いね。若い選手に教えていただきたい」と相好を崩していた。
 そんな福谷が卒論のテーマに選んだのは「球の出所の見づらさ」を数式により明確化すること、だという。

「リリースの瞬間が見づらい投手として福谷が〝研究対象〟としたのがロッテの成瀬善久でした。モニター上で肩・肘・手首の位置をマーキングして、フォームを解析していました」(研究室の関係者)

 約30分の発表の末に、彼が結論として出したのは「体の回転幅を抑えることが〝見づらさ〟につながる」というもの。分かりやすく言うと、相手打者に自分の体の側面を見せた状態をキープすることが重要というわけだ。

「神宮のマウンドに比べれば、まったく緊張しなかった」

 終了後にはこう堂々とコメントした福谷だが、野球ファンが気になるのは「頭の良さがプロでの結果につながるのか」だろう。専門家たちはこう語る。

「MAX155km/hの速球は魅力だし、それを生み出すフォームも理想的です。体が開かないし、右腕が体から離れずに上がってくる。研究を活かしているのでしょうね」(評論家・小関順二氏)

「彼のストレートは良い意味で〝クセ球〟なんです。右打者の外角にはカットボールのように外に逃げ、内角にはツーシームのように食い込む。コースが甘くならないように計算して球を動かしている。相当したたかですね」(現役スカウト)

 大谷翔平、藤浪晋太郎と大物新人が多数デビューする来季の球界だが、〝唸るポイント〟の多さでいうと、この男が隠れたナンバーワンかも知れない。

「フライデー」2013年1月4日号より