佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」――日本の経済力が衰退傾向にあっても、客観的な国力は強い(質疑応答より)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.004より
【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.004 目次】
―第1部― インテリジェンス・レポート
 ■分析メモ(No.7)「パレスチナ問題をめぐる日米同盟の亀裂」
 ■分析メモ(No.8)「中国機による尖閣諸島領空侵犯」
―第2部― 読書ノート
 ■藤本健二『引き裂かれた約束 全告白・大将同志への伝言』
 ■猪瀬直樹『解決する力』
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 佐藤優さんの今後の予定

読書ノート(No.7)

◆藤本健二 『引き裂かれた約束 全告白・大将同志への伝言』 講談社 2012年

 金正恩体制下の北朝鮮のインテリジェンス活動を知るための好著である。

 2012年6月16日、東京に北朝鮮からの連絡係が突然、藤本氏の前に現れ、平壌への招待を告げる。この招待が、金正恩のイニシアティブによることを知り、藤本氏は、7月21日から8月4日まで北朝鮮を訪問し、金正恩夫妻、また藤本氏が平壌に残した妻子と再会する。

 藤本訪朝に日本政府も関心を持し、松原仁拉致問題担当相が藤本氏と接触する。結局、藤本氏が期待した野田佳彦首相の親書を松原氏は準備できなかった。9月初旬、藤本氏は北京経由で北朝鮮再訪を試みるが、北朝鮮当局は藤本氏の入国を認めなかった。外形的にはそれだけの話であるが、細部には北朝鮮に関する重要な情報が詰め込まれている。本書の意味は、それを読み解く人の北朝鮮に関する知識と洞察力で大きく変化する。北朝鮮専門家やインテリジェンス機関にとって、本書はまさに「宝の山」だ。・・・・・・(略)

読書ノート(No.8)

◆猪瀬直樹 『解決する力』 PHPビジネス新書 2012年

 猪瀬直樹氏は、12月16日に行われた東京都知事選挙で、434万票を獲得して当選した。これは日本の歴史で個人が獲得した最大の得票数だ。知事選挙の約1か月前の11月20日に猪瀬氏は本書を上梓した。本書を読むと尖閣問題に関して猪瀬氏が3つの重要なイニシアティブを発揮していることがわかる。

 第二は、猪瀬氏が仲介者となり、尖閣諸島を管轄する最末端の地方行政機関である石垣市の中山義隆市長を石原慎太郎東京都知事と面会させたことである。これで沖縄県を迂回して、東京都が「地元の民意」を踏まえて行動しているという擬制を整えることになった。

 沖縄県は、仲井真弘多知事を含め尖閣諸島の現状維持(スタートゥス・クオ)を主張している。中山石垣市長の見解は沖縄県では圧倒的少数派の意見である。石垣諸島を管轄する沖縄県の意向を無視するという枠組みは民主主義原則に合致しない。

 第三に、猪瀬氏が総選挙で自民党政権が成立した後の、明確なシナリオを書いていることだ。猪瀬氏は、・・・・・・(略)

―第3部― 質疑応答

 読者からの質問には、物理的に可能な限り、極力お答えして、双方向性を担保したいと思います。質問者名を実名にするか、匿名、ハンドルネーム、イニシアルするかについて指示してください。指示がない場合には、匿名にします。 ※質問末尾のカッコ内が質問者名。今回は12月23日到着分までの質問にお答えしています。それ以降に届いた質問については、次号で回答する予定です。

質問:インテリジェンスの世界では東南アジア諸国はどのような位置づけですか?

 私の知る限りでは、東南アジア諸国の外交については、日本ではあまり報じられていないようです。インテリジェンスの世界では、東南アジア諸国はどのような位置づけになるのでしょうか?

 佐藤さんは「国力とインテリジェンス能力は比例する」と述べておられますが、そういった意味合いでは東南アジア諸国のインテリジェンス能力は貧弱なのでしょうか? 私がタイ人のビジネスマンと接している中での印象では、全外交的に日本や欧米の企業とつき合い、かなりしたたかに思われます。日本に対する相応のリスペクトはありますが、あくまでも「相応」であり、この点を読み間違っている日本人は多いように思われます。(Y.I)

【佐藤優さんの回答】 一言で東南アジア諸国と言っても国情も国力もさまざまです。Y.Iさんがご指摘になられたタイは、日本とともにアジアで植民地にされたことのない数少ない国です。従って、外交力、インテリジェンス能力ともに、同程度の国力のアジア諸国と比較して長けています。

 しかし、タイのインテリジェンスは、自国と関係のある範囲の比較的狭い情報しか集めていません。その点、日本のインテリジェンス能力は、タイを含む東南アジア諸国とは同じ土俵に乗らないほど高く、広範囲をカバーしています。個々に優れた交渉能力を持つ人がいるということと、当該国家のインテリジェンス能力は、基本的に異なります。

 現在において国力の基本は、経済力です。日本の経済力が衰退傾向にあるといっても、客観的な国力は強いです。従って、・・・・・・(略)

―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録

 本コーナーは、佐藤優さんが毎月第1金曜日と第3金曜日に出演している文化放送「くにまるジャパン」での発言を紹介します。 今回は12月21日放送分をお届けします。なお、ラジオでの発言を文字にするにあたり、読みやすいように修正を加えている部分もあります。 ※野村邦丸(のむら・くにまる)氏は番組パーソナリティ、伊藤桂子氏は金曜日担当のパートナーです。

佐藤: 佐藤優です。おはようございます。

邦丸: 朝日新聞が社会面で伝えています。日本家族計画協会が20日に公表した「男女の生活と意識に関する調査」によると、過去1ヶ月間セックスをしなかった夫婦の割合は41.3%で、この質問を始めた2004年以降、最も高い数字だった。セックスレスが依然として高い水準にある状況が浮かび上がった、とあります。

佐藤: それは私なりに説明できます。ロシアでの経験からです。

邦丸: 出ました! ロシア!

佐藤: 私がかつてソ連に行ったとき、びっくりしたんです。あの国はセックスに関して厳しいというイメージでしょう。ところが、暗くなると、みんな林でセックスしているんです。

伊藤: 寒そう・・・・・・。

邦丸: まさかそんなことはないでしょう。モスクワで?

佐藤: 本当です。

邦丸: 中にはそういう人たちもいたということでしょ。

佐藤: 違う! そういう人たちがすごく多いの。ベンチにおじいちゃん、おばあちゃんが座っていて、若いカップルが近寄っていって、何するのかというと、ラブホテルがないから、おじいちゃん、おばあちゃんが2~3時間、部屋のカギを貸してくれるわけです。・・・・・・