医療・健康・食
メガファーマが席巻するがんワクチン開発に一矢、
日本式「がんワクチンセンター」が夢の治療薬に挑む!

上昌広(東京大学医科学研究所特任教授)

第3回はこちらをご覧ください。

はじめて承認されたがんワクチンにキリンビールの貢献

 12月19日、大手製薬会社「メルクセローノ社」(本社スイス)が、日本で進めていたがんワクチンの治験(新薬の承認申請を目的とした大規模な臨床試験)の結果が公表された。MUC1という抗原を標的とした肺がんに対するワクチンだ。結果は、ワクチンによるがん患者の生存期間の延長は確認されず、この治験でワクチンの有効性を示すことは出来なかった。

 この治験の症例数は1514例。治験では一人当たり100万円以上の費用を要する。最低でも数十億円はかかっていることになる。

 知人の製薬企業社員は、「プロジェクトの責任者は退職を余儀なくされるでしょうね」と言う。

 免疫細胞を活性化してがん細胞を狙い撃ちする「がんワクチン」は、これまでの抗がん剤のような副作用がない夢の治療薬だが、研究開発の途上だ。

第1回でご紹介した前立腺がんのワクチン「プロベンジ」をFDA(アメリカの食品医薬品局=日本の厚労省にあたる)が承認したことにより、「免疫療法はがん治療に有効である」というコンセプトは実証された。しかし、では実際に、どのような患者群に、どのような方法で投与すれば最も効果的なのかは、まだはっきりと分かっていないのが現状だ。当面、試行錯誤を続けるしかない。

がんワクチン治療革命
著者:中村祐輔
講談社 / 定価1,470円(税込み)

◎内容紹介◎

中村教授が長年取り組んできた、がんの新薬=がんペプチドワクチン驚異の臨床報告。アメリカで「第4の療法」としてついに本格的に位置付けられたワクチン療法(特異的免疫療法)の開発の最前線で、末期がんが消えた! という驚くべき臨床例が。「私は最後まで希望を捨てません。だから、けっしてあきらめないで戦ってください」---世界のナカムラが、がん患者に「希望」を届けたい一心で開発した「がんペプチドワクチン」。巷にあふれる科学的実証がされていないワクチン療法と、どこが違うのか---がんと戦う勇気の出る治療最前線を紹介します。