首相官邸人事は霞が関のパワーバランスに配慮した絶妙な配置! 前回の失敗に学んだ安倍新政権は国民の信頼を取り戻せるか!?
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 安倍晋三政権がスタートした。注目すべきなのは、閣僚よりも首相官邸の人事である。

 内閣総理大臣は官邸に入ると、意外なほど孤独である。面会しようとする議員や官僚たちは、すべて事前にアポイントをとりつけなければならない。よほど親しい人以外は直接、首相に電話もできない。すると首相の側から電話したり、執務室に呼びつけない限り、議員も官僚も、まして普通の民間人は簡単に首相に会えなくなってしまうのだ。

 そこで首相官邸の人事が重要になる。官邸にポストが与えられれば、それだけ首相に会いやすくなる。首相との面会日程をアレンジする首相秘書官ともなれば、局面によっては閣僚をしのぐ影響力を発揮するのも可能である。

 なぜかといえば、自分が「この人はいま首相と会わせたくない」と思えば、いろんな理由をつけて面会日程を先送りできるからだ。面会する側は問題がすべて決着してからアポをとりつけ、ようやく首相に直訴できたとしても「時すでに遅し」になってしまう。問題が複雑で利害が激しくぶつかり合う局面でこそ、面会のタイミングがモノを言う。

 首相発言もそうだ。首相に「ご発言要領」を手渡すのは秘書官の役割である。閣僚や幹部官僚がいくら事前にレクチャーして首相の了解を得ていても、秘書官が渡すメモの文章に落とし穴を潜ませて、土壇場で骨抜きにするのは常套手段だ。

首相の側近に経産省出身者が3人

 安倍官邸の人事をみると、霞が関に対して絶妙なパワーバランスで配慮した跡がうかがえる。

 まず、政務秘書官には第1次安倍内閣で首相秘書官を務めた今井尚哉・元資源エネルギー庁次長(82年経済産業省)を据えた。事務秘書官は財務省から中江元哉・前主税局審議官(84年)、経産省から柳瀬唯夫・前経済産業政策局審議官(同)、外務省から鈴木浩・前駐英公使(85年)、警察庁から大石吉彦・前警備局警備課長(86年)、防衛省から島田和久・前地方協力局次長(85年)という顔ぶれだ。

 首相補佐官には木村太郎衆院議員、磯崎陽輔、衛藤晟一両参院議員のバッジ組に混じって、経産省出身の長谷川栄一・元内閣広報官(76年)を政策企画担当の補佐官に入れた。長谷川を加えて経産省出身者が3人、首相の側近に入った形である。

 通常は議員の秘書が収まる政務秘書官に今井が入ったのは異例だ。そこに安倍と個人的にも近いベテランOBの長谷川が加わったので、経産省としてはさぞ心強いだろう。

 財務省はどうするのかと思っていたら、丹呉泰建・元財務事務次官(74年)が内閣官房参与に入った。それに小泉純一郎政権で政務秘書官を務めた飯島勲氏、外務省から谷内正太郎・元外務事務次官(69年)、米イェール大の浜田宏一名誉教授の3人も内閣官房参与に起用した。

 つまり経産省が官邸で突出しそうなところを、財務省から大物の丹呉を起用してバランスをとった形である。小泉政権で机を並べた飯島も丹呉と近いので、人数は少なくてもパワーは十分だろう。外務省は谷内が入ったので文句はない。さらに警察庁からは杉田和博・元内閣危機管理監(66年)が官房副長官に抜擢された。

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