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新春合併号特別企画
いよいよこの国が動きだす
立花隆×後藤謙次 2013年 日本を読み切る
安倍政権、中国と戦争を始める?

安倍氏の「勇ましすぎる発言」が命取りになる〔PHOTO〕gettyimages

 自民党が294議席で圧勝し、総選挙はひとまず終わった。再び政権を取り戻した自民党は本当に変わったのか。国民はいまだ半信半疑だ。次の審判が下る参院選を来夏に控え、この国の行く末を占う。

尖閣とどう向き合うのか

立花 今回の選挙報道をテレビで見ていて印象的だったのは、結果的に294議席と大勝したにもかかわらず、安倍晋三総裁や石破茂、菅義偉といった自民党幹部たちが慎重な物言いをしていたことです。

 彼らも選挙には勝ったけれど、決して自分たちの力で勝ったわけではないという自覚があるんでしょう。

後藤 投票の約1週間前に安倍さんに会ったときも、「自民党が優勢だという実感はない」と言っていましたからね。実際、比例区の議席を見たら、大惨敗した'09年の政権交代選挙が55議席、今回が57議席と、ほとんど変わっていません。

立花 他がひどすぎたから、自民党が浮かび上がっただけでね。

 私は立教大学で社会人を相手に講義をしていたことがあるのですが、投票日の前日にその同窓会的な集まりがあったんです。そこで「明日の選挙でどこに投票するか、もう決めている人は?」と聞いてみました。すると、ほとんどの人が決めておらず、投票所に行ってから決めると言う。

 実は私もそうだったんです。決めようという気持ちが起きない。この選挙が何のための選挙かすらよくわからない。基本的認識として、この総選挙で自民党が勝利して政権交代が行われるのは確実だけれど、それで日本の政治構造が見通せるような変化が起きるかと言えば、そんなことはない。

後藤 まったく同感です。来夏の参院選をワンセットで考えないと意味がない。

立花 だから、この総選挙が終わって、次の参院選までに何が起こるかで、日本の将来もある程度見えてくるのではないかと、その場で話したわけです。

後藤 安倍さん本人も、11月に取材したときにはすでに「参院選を睨んだ体制をすぐに作らないといけない。いろんな目標を掲げても、参院選で失敗すれば、たちまち挫折してしまう」と言っていました。

 実際、安倍総理は就任早々から厳しい局面に追い込まれます。選挙期間中、安倍さんは「民主党政権時代は外交的敗北を続けてきた」と言っていましたが、「外交的勝利」とは何かについては語っていない。尖閣諸島に公務員を常駐させるとも言っていましたが、そんなことできっこない。12月13日に尖閣諸島上空に中国のプロペラ機がやってきましたが、これにどう対応するのか。日本には海上保安庁はあっても航空保安庁はない。では自衛隊が出て行って、中国機とドッグファイト(空中戦)をするのか。

立花 安倍氏は憲法改正を考えているようですが、いくらなんでも、すぐに実際の政治スケジュールに乗ってくることはない。本気で憲法改正をやるつもりなら、その手順を考えなければならないが、それを考え出したとたんに、とてつもなく大変ということがすぐにわかる。連立を組む公明党も付いてこないでしょう。自衛隊が中国機と戦うなんて非現実的です。

後藤 そうですよね。野党の党首として勇ましいことを言っているだけならよかったのですが、総理は発言に責任を負わなければなりません。中国との戦争が始まるんじゃないかと心配する人もいるようですが、「尖閣への公務員常駐」といった発言が安倍さんの命取りになるかもしれません。言ってみれば、沖縄の米軍基地移設問題で「最低でも県外」と言ったことで総理の座を追われることになった鳩山由紀夫元首相の二の舞になる可能性も充分ある。

立花 あり得るでしょうね。だから選挙が終わったとたん、そういうことも考える必要があると言っただけ、みたいにトーンダウンしてしまった。

 そもそも、自民党内を見たら、安倍氏、石破氏の関係にギクシャクしたところがあるでしょう。当初は石破氏には閣僚ポストを用意し、もっと安倍氏の思いのままに動いてくれる人間を幹事長にして、クビをすげ替えるという見方もありました。結局、石破氏を幹事長に留任させることにしましたが、あれはどういう意味があるんでしょうか。

後藤 これだけ選挙で大勝した幹事長を、自分の思い通りに動かすわけにはいかないということでしょう。9月の総裁選のとき、党員票でトップだった石破氏を幹事長にせざるを得なかったのと同じことですよ。

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