企業・経営
ビジュアルを活用すれば日本企業は復活する
成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか【第4回】

文/大谷和利

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質・量ともに世界最高のビジュアルを持つゲッティ イメージズ

 ゲッティ イメージズは「デジタルメディア産業におけるアップル社」とも言える存在だ。業界最大の規模とライブラリの品質の高さはもちろんだが、斬新でわかりやすい価格体系を導入し、先進的なデジタル技術の応用にも熱心に取り組むなど、柔軟な発想を持つ企業である。優れた技術を介して膨大なコンテンツに効率よくアクセスし、革新的な利用をする方法を確立した点に大きな意味があった。

 創業者の一人、マーク・ゲッティは、石油王ジャン・ポール・ゲッティの孫に当たり、共同設立者で現CEOのジョナサン・クラインとロンドンの銀行で出会って意気投合。1995年の起業当初は、アナログ写真ベースのビジネスだったが、時代の変化にいち早く気づき、デジタル写真とネット配信のシステムに移行した。

 同時に、古今東西の銀塩写真やフィルムのコレクションも充実させてきた。ロンドンに「ハルトン・アーカイブ」と呼ばれる写真の保管施設を創設して、作品の保存、維持を行い、同市の中心部にある自社ギャラリーでの展示や外部での写真展などを通じて、写真文化を守り育てる活動にも情熱を注いでいる。

 このアーカイブを含めてゲッティ イメージズのライブラリは、写真が8000万点以上、動画が5万時間以上、楽曲が10万曲以上と膨大な規模だが、このような広いバラエティと高いクオリティは、ユーザーの利便性を高めるための必須条件と言える。なぜなら、写真などのイメージ自体は不変でも、それが持つ情報としての鮮度には旬があり、またTPO(いつ、どこで、何のために使うか)によって価値が変わってくるからだ。

 たとえば、SNSの大手「フェイスブック」の誕生秘話を描いた映画『ソーシャル・ネットワーク』で使われた日本の老夫婦の写真があった。一見、何の変哲もない写真だが、話題の映画の中で使われたという理由から注目が集まり、実際、そのイメージが「長年連れ添った夫婦間の心のつながり」を感じさせるものだったために、その後の需要が急激に高まったことがある。

『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか 一枚の写真が企業の運命を決める』
著者:大谷和利 
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 ただし、こうしたニーズの変化を事前に正確に予測することは不可能であり、すべてはユーザーが社会や市場の動きをどう読み、イメージをどう活用するかに左右される。同時にユーザーは、自らの創造性を発揮できるようにビジュアルを選定しなければならない。それがうまく行くかどうかは、ひとえに、無限に近いバラエティの豊かさと、どのビジュアルが選択されても使用に堪えるクオリティの高さの両方を、ライブラリ側が提供できるか否かにかかっている。

「世界中が求める写真」と「誰にも求められない写真」

 逆にはっきりしているのは、「求められていない写真」である。特に海外で好まれないのは、クリエイティブでもエディトリアルでも共通していて、それは、いかにも記念撮影のような、あるいは記録写真然としたイメージだ。