言葉や文字より「視覚情報重視」で勝つIKEAの戦略
成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか【第3回】

文/大谷和利

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イケアではなぜ購買意欲が高まるのか

「製品に対して何らかのコミットをする前に、視覚情報を駆使して買い手の意欲を高める努力」を、世界38ヵ国、300店舗以上のストアで毎日のように展開しているのがイケアである。ここでは、筆者が消費者としてイケアストアを訪れる際に感じていることを中心に述べてみたい。

 イケアストアの強みは、顧客が売り場にたどり着く前に購買意欲を盛り上げる、その手法の上手さにある。そして、その働きかけは、駐車場にクルマを停めたときから始まるのだ。

 言うまでもなく、他の一般的なホームセンターや大型スーパーにも駐車場は存在する。しかし、それらの多くは殺風景で、コンクリートの壁面には、せいぜいエレベーターや店舗の入口の方向を示す矢印が記されている程度だ。

 これに対し、イケアストアの駐車場では、あちこちの壁面に、最新のイケア製品やそれを使う人々のポートレート、あるいはレストランの名物メニューアイテムのミートボールやシェフの大きな写真などが、パネルとなって設置されているのだ。

 郊外のストアまでわざわざ足を運んでいる時点で、顧客はすでに何かを購入するつもりではある。その意欲を、実際の売り場に到達するまでにどこまで高められるか、その最初の仕掛けが、これらの写真パネルなのだ。

 ちなみに、イケアはウェブ上でオンラインカタログを公開しているが、通信販売は行っていない。それは、顧客のショッピング体験をコントロールしきれないオンラインストアではなく、リアルな店舗に来てもらうことが、これらの仕掛けを活かす上でとても重要だからである。

『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか 一枚の写真が企業の運命を決める』
著者:大谷和利 
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 まず顧客は、クルマを降りたときから、スタイリッシュな写真によって「イケア製品のある暮らし」や「レストランで食事をして帰る」といったライフスタイルのイメージを潜在意識に刷り込まれる。これにより、無意識のうちに買い物をする気分が盛り上がる。

 次に、顧客が駐車場のフロアから1階のエントランスに降りるまでの間にも、家具の実物の展示や別の写真を通じて、デザインの良さと価格の安さをアピールする。また、なぜ安いのかという理由(「価格目標を決めてからデザイン作業に入るから」とか「商品は持ち帰り前提で、送料無料化のコストを製品価格に上乗せしないから」など)が、やはり目立つ色やワンポイントの写真と共にパネル化されて掲げてある。

 ここで思い出すのが「ドロシー・レーンの法則」と呼ばれる価格戦略だ。これは、アメリカのオハイオ州にある高級食品スーパーのドロシー・レーン・マーケットが経験則的に見つけた値付けのルールであり、以下のような相関関係が導き出されている。