企業・経営
経営者の顔写真を見せない日本企業の不思議
成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか【第2回】

文/大谷和利

第1回はこちらをご覧ください。

「会社情報」ページから、企業の横顔が見えてくる

 ブランディングが確立されている企業は、たとえば会社名を聞いただけでも、そのロゴやコーポレートカラーや製品を思い浮かべることができる。これは、「企業の顔」が見えていることを意味する。つまり、どういう方向性を持つ会社で、どのような人々が働き、どんなことをビジネスにしているのかを、消費者がイメージできるわけだ。

 そうしたイメージは、必ずしもその企業の本当の姿であるとは限らない。しかし、もしも実態との乖離(かいり)が大きければ、そこから生じる綻びが、ゆくゆくはブランドを失墜させていくことになる。老舗(しにせ)と言われてきた料理店が、残り物を使い回ししていたことで信用を一気に失う、といった出来事はその典型と言える。

 一方で、ブランドに対する過剰な期待が、そのような企業の虚像あるいは偶像を大きくしてしまうことがあり、これも別の危険性をはらんでいる。自社の基準を満たし、その分野の水準を超える製品やサービスを提供しても、寄せられる大きな期待に届かなければ、やはりブランドに傷がついてしまうからだ。

 したがって、ブランディングに真剣に取り組む企業は、外部に対して情報を厳しくコントロールしながら出していくことにも熱心だが、同時に、開示すべきところは積極的にオープンにして、メッセージを明確に伝えてもいる。ブランドだけが一人歩きをしないよう、配慮をしているのだ。

 それを象徴するのは、各企業の公式ウェブサイトにある「会社情報」だ。宣伝コピーが躍る製品やサービスセクションのページが企業の表の顔だとすれば、会社情報のページは、その横顔を浮き彫りにする。

『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか 一枚の写真が企業の運命を決める』
著者:大谷和利 
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 欧米では、企業のみならず個人であっても、顔の見えるコミュニケーションが重視される。これは、初対面の相手との握手に、武器を持っていないことを示す意味があった時代の名残なのかもしれないが、自分がどんな人間と取引をしているのか、どんな人々が作った製品を購入しているのかについて、非常に大きな注意を払う傾向がある。それが欧米の企業の「会社情報」にも反映されている。

コカ・コーラやBMWの素晴らしい役員紹介ページ

 その典型的な例が、シンクフォース社が発表する「世界ブランドランキング」でも上位の常連となっているコカ・コーラである。同社は1930年代から、サンタクロースの衣装の色を自社のコーポレートカラーである赤と白に描いた広告を打ち、そのイメージを世界中で定着させたほど、ブランディングに長けた企業だ。実際には、それより前から、赤い衣装のサンタが描かれた挿絵などは存在していたが、伝説のキャラクターだけに、他にも青や緑などさまざまな色の服をまとう姿も多かった。それがコカ・コーラの宣伝活動によって、赤と白がサンタの服の「国際標準色」として根づいたのである。