〈人生を盗まれない働き方〉をしよう
「天才でもない、普通の人にできるナリワイ作り」
伊藤洋志さん【第3回】

[左]米田智彦さん(フリーエディター)と、[右]伊藤洋志さん(「ナリワイ」主宰)

第2回はこちらをご覧ください。

「火を起こせるアイドル」が生まれるまで

米田 では、また別のナリワイの話をしましょうか。「火起こしアイドル」についてはどうですか。「アイドルも自給自足しよう」というコンセプトでしたよね。

伊藤 「身の周りのいろんな要素をどこまで自給自足できるか」という試みの一つですね。「自給自足」というと、食べ物のことを連想する人が多いと思うんですけど、食べ物以外のところも生活の中では結構多いと思うんです。たとえば娯楽とか。だから「アイドルも自給自足した方がいい」と思って、作ろうとしたわけです。

米田 娯楽もエンタメも自給自足しようと考えたと。

伊藤 でも、これは意外に難しかった。まぁ、自分が面白かったのでよかったんですけど、「火を起こすアイドル」を作ろうと思いまして。

米田 それが、実は原発問題に繋がる壮大なテーマになるんですよね(笑)。

伊藤 はい。「火起こしアイドル」のプロジェクトを始めたのは2010年でしたから、まだ福島の原発事故は起こっていなかったんですけど、あるエコ雑誌がTEPCO(東京電力)の広告を延々と載せてたんですよね。僕は「許し難い、どこがエコなのか」と腹を立てていました。

 当時はまだ、二酸化炭素の排出量を減らすのがエコだとか言ってましたけど、核廃棄物の処理ができなかったら意味がないでしょう。で、そのエコ雑誌の広告企画記事では、著名人が対談して「原子力の平和利用を」とか言ってたんです。さらにその雑誌で、あたかもTEPCOさんに追い出されるように広告を見なくなった元メインスポンサーが、東京ガスさんだったことがわかりました。

米田 そんなことがあるんですね。

伊藤 そのとき僕は、「オール電化は間違ってるんじゃないか。まずはガスを応援しなくては」と思いました。で、火おこしアイドルの最終目標は「東京ガスの広告に出ること」にしようと。でも、いきなりは難しいだろうから、まずはプロパンガスのレモンガスの広告を狙おうと考えたんです(笑)。それで年間100万円くらいの契約を取れたら万々歳やと。

 そのために、「古代発火方法」ができるアイドルを作って、ライブと称して火起こしを行い、歌も作ってCDを売りたいと思った。まぁ、テキトーすぎますが。

米田 火が起こせるアイドルはどうやって見つけたんですか?

伊藤 初代の人はスカウトしたんです。火を扱える女性を見つけたので、「すみませんけど、初代は一回目のイベントをやるだけでいいので、火起こしアイドルになってください。お願いします」と頼んで引き受けてもらった。岡山に、吉備津神社という火を祀る神社があって、そこに成功祈願に行かないとアイドルとしては始まらないからと言って連れていき、神主さんに成功祈願してもらいました。

米田 彼女、伊藤さんの『ナリワイをつくる』という本でも、カラーページに出ていましたよね。

伊藤 ちゃんと一回イベントをやってくれて、最後に握手会もやって、写真を撮るまでやりましたよ。プレスリリースも出しました。それで、新聞社も二社ほど取材に来てくれたので、オール電化の問題や火の文化性の話をしたり、鰹のたたきや焼杉など、火にまつわる特産品のイベントを企画して地域を盛り上げたいという話もしたんですけど、「いや~、記事にするのは難しいな」という顔をされて、結局、記事にはなりませんでした(苦笑)。

米田 じゃあ、初代のアイドルは公式記録として残らなかったわけですか。

伊藤 新聞が取材に来たという記録しか残せなかったですね。初代の人が終わると、次は「ミス○○大学」だという女性のスカウトに成功しました。めっちゃいい人で、学生時代にNPOやっていた。

米田 割と社会貢献的なことを志望していて、かつ美人という。

伊藤 そうそう。社会派の人で、めちゃ腕が細いんですけど、頑張って、火を起こせるまでなったんですよ。「古代発火検定」の5級まで取って。

米田 そんな検定があるんですか(笑)。

伊藤 和光大学の名誉教授の方がやっている検定なんです。

米田 5級というと、一番下くらいじゃないですか?

伊藤 一番下です。ストップウォッチで計って、何秒で火を起こせるかとか、そういうのでランクが決まる。それで5級になったので、「よし、これからだ」と思ったら、彼女はその後すぐ、某局のアナウンサーとして採用されまして。

米田 あ、就職活動中だったんですね。

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