田原総一朗×勝間和代×安藤美冬 「メディア化する個人のジレンマ」 第4回「有名になりたい人と有名になりたくない人」

【第3回】はこちらをご覧ください。

松下政経塾出身はなぜダメなのか

田原: あなたのこれからの話をちょっとすると、有名人になるかどうかはどうでもいいんだけれども、これから何で勝負していこうと思うの? 今のこの世の中で。

安藤: うーーん。勝負したいという欲ないですね。

田原: そういうことはどうでもいいんだよ。だってあなたは集英社を辞めたんでしょう、欲があるから辞めたんじゃないの? 欲がなければなかにいたほうが給料が高いしずっと食っていけるんだから、辞めるというのは欲があるんですよ、独立して何かやりたいという。

安藤:  強いて言えば「解放欲」ですね。もっと自分らしくありたい、自由になりたいという強烈な欲求。好きな場所に住んで、好きな人と好きなことだけをやっていけたら最高です。だから、数年後は日本と海外を行き来するような生活はしたいですね。

田原: だって、行き来するだけだったら宅急便みたいなものじゃない(笑)。

安藤: 宅急便というよりは放浪者のように(笑)、あちこちを旅するように生きていけたらいいなーと思います。その時々でやりたくなったこと、好きなことをしながら。

田原: だから、その「好きなこと」って何ですか? と聞いているんですよ。勝間さん、ちょっと先輩として解説してみて(笑)。

勝間: 私なんかは、好きなことと言えば新しいことをするのが大好きなので、ダイエットの本を100冊読んだのも、おもしろくてしょうがなかったんですよ。料理のレシピ本もずいぶん買って、全部読んで一つひとつ実際に作っているんですね。

 そういう新しいチャレンジをさせてくれるような環境や、そのための十分なお金を取材費や本の執筆費用としていただけて、それでいろいろな国に行って、この間はFacebookの本社にも行ってきましたし、いろいろな国に行くためのお金も出していただけるのだったら、いくらでも本を書くしバラエティにも出ようと思うんですね。

田原: 僕は実は今の勝間さんにいちばん関心を持っている。たとえば、政治家でも田中角栄という人がいるでしょう。田中角栄が総理大臣のときには僕は1回も会っていない。興味がなかったから。ちょっと彼が落ち目になってから、落ち目のなかで田中角栄がどう生きるかということにものすごく興味があって、10回くらい会っていますけどね。

 あとは、小沢一郎という人がいるでしょう、あれも小沢一郎が活躍しているときはほとんど興味がなかった。ちょっと落ち目になって、さあこれからどうするか、というところに興味を持った。勝間さんは落ち目じゃないけれども、自分でそう書いているからね。それでこれから勝間さんがどうするかということにものすごく興味がある。どうしますか?

勝間: 基本的には、もう自分がこういうことをしたいんだというのがいくつか柱があるので、その柱を中心にやっていこうかな、と思っています。

田原: たとえばどういうこと?

勝間: 一つは、勝間塾というのを去年の4月からやっているんですけれども、まさしく私のコアなファンを1000人くらい集めて、東京の方たちには実際に来ていただいて、東京以外の方にはウェブ中継で見ていただくような形で、問題解決の手法とか、マーケティングとか、ITリテラシーとか、本当に必要なリテラシーを学んでいただいているんですね。

田原: 塾といえば、大阪の橋下さんが塾を作っている。もう少し勝間さんに近いところでいえば、大前研一さんが塾を作っていますね。ああいうものと勝間さんの塾はどこが違うの?

勝間: 私はかなり廉価にしています。アンケートをとりまして、「1回の飲み代以下だったら何とかなる」という意見が多かったので、受講料を4800円に設定しているんですよ。それでウェブ中継などを使ってなるべくコストを下げて、私が全部教えると飽きてしまうので、三分の一くらいは私が講師を務めるんですが、三分の二くらいはその分野の先端の方々を招くんです。

 たとえばマーケティングの話ならマーケティングの専門家を招くし、経営学だったらベンチャーの社長さんを招くし、身体学だったらそういうことを本当にやってらっしゃる方を招くというような形で、すごくおもしろいものをやりたい。でもなかなかそういう講演会って受講料が高かったりして、行けないですよね。でもそれが1000人集まってみんなでコストをシェアすると簡単にできるんです。

田原: 本当に1000人集まるの?

勝間: 現に今集まっていますね。1回で物理的に東京に集まるのは150人くらいです。そのときに見られる方はウェブ中継で見るし、そのときに見られない方は、録画したものをあとでウェブで見るという形です。今のこの対談の中継に近いですね。

田原: 失礼ですけれども、講師の方にはどのくらいお支払いするんですか?

勝間: これはもう、講師の方の相場によります。たとえば、一般企業からお呼びした方だと個人的に謝礼を受け取れない方もおられるんですよ。だからケースバイケースですね。本当はもっと人数いらしていただけると、講師の方々にも十分にお支払いできるので、そこもまだ検討課題なんですけれども。

田原: 安藤さんも学校をやっているんでしょう? どういうことをやっているんですか?

安藤: セルフブランディングをテーマにした、「自分をつくる学校」というものです。アーティストを手がけるマーケティングプランナーの方とタッグを組んで今年の3月末に立ち上げました。

 具体的には、「自分のブランドをつくる」ことを目的としていて、自分のこれまでの経験を棚おろしして自分ブランドのコンセプトを決めたり、広告商品のようにキャッチコピーをつけたり、世の中に自分を印象づけるためのキーワードを作成したり。また、毎回ジャーナリスト佐々木俊尚さんらゲスト講師をお呼びして、各回様々な切り口で対談も行っています。

田原: 生徒さんは何人くらいいるんですか?

安藤: 約40人です。年齢は20代半ばから上は60才までで、男女ちょうど半々くらい。

田原: 佐々木さんよりは勝間さんのほうがいいと思うんだけれども(笑)。どうすれば有名になるかとかどうすれば成功するかというのは、佐々木さんはあんまり知らないだろうけど、勝間さんはよく知っているんだから。安藤さんは勝間さんをあんまり好きじゃないのかな?(笑)

安藤: 私ですか? そんなこと言ってないですよ(笑)。なんだか田原さんの眼力に気圧されて、すっかり調子が狂ってます。なんだか汗もかいてきましたし・・・(苦笑)。

田原: 僕は勝間さんは当然お呼びすべき人だと思うから。

勝間: それはもう、呼んでいただければいつでもまいりますよ。

安藤: 本当ですか! ありがとうございます。

勝間: 多分、セルフブランディングに対する発想が多少違うと思っていて、私はセルフブランディングは教えるものじゃないと思っているんです。セルフブランディングをするための材料となる武器とか考え方はお伝えしようと思っているんですが、それ自体はご自身でプロデュースするものだと思っています。

田原: 今ね、松下政経塾出身の政治家がダメだという本が2冊出ているんですよ。書いたのは2冊とも官僚だというのがおもしろいね。松下政経塾がなぜダメかというと、今の首相の野田さんが松下政経塾出身なんだけれども、実は彼は松下政経塾を出て県会議員を2回やってから衆議院議員になったわけで、世の中をまったく経験していない。

 企業に勤めたこともないし、官僚になったこともない。政経塾って学校なんですよ。教えられるだけで世の中を学んだ、つまり修羅場をくぐったことがなく政治家になっている、それはダメだ、と言うんだけど、これはどうですか?

勝間: たとえば橋下徹さんがなぜ評価が高いかというのはいろいろな意見がありますが、やっぱりご自身で弁護士事務所をやっていた時代に、いろいろな社会の機微や経営を考えたところが土台になっている、と思います。

田原: そう、けっこう弁護士事務所としては儲けていた。

勝間: 社会問題についての提言も経営者としての気づきが土台となっているので、そこに問題意識がある。それに対して、松下政経塾の方たちというのは、政治「屋」になってしまう傾向があるんじゃないでしょうか。結局政治そのものが職業になってしまっているんですね。まさしく有名人そのものが職業になるのとすごくよく似ていると思うんですよ。

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