佐藤優 インテリジェンス・レポート「総選挙の結果をどう見るか」
佐藤優直伝 「インテリジェンスの教室」 Vol.004より
【はじめに】
2月16日に行われた衆議院議員選挙の結果、自民党の得票数は惨敗した前回総選挙の時点と大きく変化していないにもかかわらず、何故にこう なったかについて分析した。さらに尖閣諸島をめぐる日中関係の緊張が今後、一層強まることについても踏み込んだ考察をした。

【目次】
―第1部― インテリジェンス・レポート
 ■分析メモ(No.7)「パレスチナ問題をめぐる日米同盟の亀裂」
 ■分析メモ(No.8)「中国機による尖閣諸島領空侵犯」
―第2部― 読書ノート
 ■藤本健二『引き裂かれた約束 全告白・大将同志への伝言』
 ■猪瀬直樹『解決する力』
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 佐藤優さんの今後の予定

分析メモ(No.7)「総選挙の結果をどう見るか」

〔PHOTO〕gettyimages

【コメント】
1.―(1)
2月16日に行われた総選挙(衆議院議員選挙)では、自民党が294議席を獲得した。自民党は、選挙前の119(公示後の追加公認含む)から175も議席を伸ばした。連立与党となる公明党の31議席と合わせると325議席になり、参議院で否決された法案を再可決することができる320議席以上を安倍晋三新政権は持つことになる。・・・(略)

2.―(1)
今回の総選挙は、政策上の争点が事実上不在の権力闘争にすぎなかった。そして、当選した自民党、さらに第三勢力で躍進し、54議席(公示前は11議席)を獲得した「日本維新の会」に属する国会議員には、3つのカテゴリーの政治エリートがいる。

2.―(2)
第1は、旧体制のエリートだ。土木工事や箱物作りを公共事業で行い、権力をカネに換えるノウハウに長けた政治家だ。政治家は人事で官僚を統制し、官僚は行政指導で民間業者に影響力を行使する。民間業者は、票をとりまとめることによって政治家に影響を与える。政治家に問われるのは、自らの選挙区にどれだけ利益を誘導できるかの手腕だ。難しい政策を政治家は勉強せず、事実上、官僚に丸投げする。「政策通」というのは、耳学問で官僚の話を大雑把に理解することができる政治家のことだ。

霞が関の業界用語で、「先生も御案内のように」という表現がある。「先生も御承知の通り」というのとは、ニュアンスが異なる。「先生も御案内の通り」と言う場合、案内する主体は官僚だ。これを通常の言語に言い換えると、「あんたたち政治家は頭が悪いのだから、難しい国家公務員試験に合格し、頭の良さが客観的に実証され、しかも実務経験を積んだわれわれの案内に従えばいいのです」という意味だ。

このように官僚に案内されることに慣れた政治家は、新しい時代に適応する能力もなければ、その必要も感じない。日本を停滞させている元凶だ。しかし、当人は「われわれがいなくては日本はダメになる」と主観的に信じ込んでいるので質(たち)が悪い。今後3年間を国土強靱化集中期間(第一段階)とし、15兆円を追加投資するという自民党の国土強靱化法案は、旧体制のエリートが影響力を回復しつつあることの証左である。

2.―(3)
第2は、偶然のエリートだ。小選挙区制の結果、本人の資質や努力と関係なく当選する代議士がいる。この人々は、偶然、国権の最高機関の一員となったが、国家を運営するノウハウが身についていないのみならず、そもそも政治家としての基礎体力がないので、政策を理解することができない。従って、政治エリートとして成長しない。

しかし、名誉欲と金銭欲が肥大しているので、国会議員としての特権を私益のために最大限に活用する。小泉チルドレン、小沢ガールズと呼ばれた国会議員の大多数が、偶然のエリートだった。偶然のエリートは、一時的にマスメディアの注目を浴びても、選挙を数回経れば淘汰されていく(今回、民主党から偶然のエリートが排除されたことは、民主主義の健全な発展の観点から歓迎される)。

2.―(4)
第3は、未来のエリートだ。・・・・・・

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