理想は「KARA」のビジネス戦略だ
成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか【第1回】

文/大谷和利

写真を「添え物」扱いする日本企業

「百聞は一見に如(し)かず」「論より証拠」など、日本人は「視覚的な情報が言葉や文字よりも的確にメッセージを伝える」という意味を持つことわざを好んで使う。しかし、ことブランディングに関しては、その重要なポイントをどこかに置き忘れてきてしまったのではないかと思うことがある。

 たとえば、「百聞は一見に如かず」の出典である漢書の「趙充国(ちょうじゅうこく)伝」を見てみよう。趙充国は前漢の名将で、70歳を超えてなお、当時の皇帝から「反乱を起こした国に誰を将として送るべきか」と尋ねられたとき、平然と「私を超える者はおりません」と答えた。

 まるで、オリンピック男子陸上100mと200mの両方で金メダル2連覇を達成したウサイン・ボルトを思わせる不遜(ふそん)な物言いだが、それに続けて趙充国が口にしたのが、有名な「百聞不如一見、兵難隃度、臣願馳至金城、図上方略」のフレーズである。

 すなわち「百回耳で聞くよりも、一度自分の目で見た方が勝ります。前線から遠く離れていては、(自分の目で現場を見られないので)戦略を立てにくいものです。私が急ぎ(反乱地である)金城まで出向き、戦略を奉りましょう」という意味で、もともとは戦いの中から生まれた言葉だった。生きるか死ぬかの戦争において、視覚的な情報の重要さが最もクローズアップされたのだ。

 現代のブランディング戦争においても、同じように、視覚的情報はきわめて大切だと言える。ただし、企業はあくまで情報を提供する立場にあり、実際に戦況を見てどこが優勢なのか、その判断を行うのは消費者に他ならない。このとき、相当の自信家かつ百戦錬磨の将であった趙充国にして、言葉や文章だけで正しい決断が覚束ないとすれば、視覚的なインフォメーションを与えられない一般の消費者が、それ以上に的確な判断を下せるだろうか?

『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか 一枚の写真が企業の運命を決める』
著者:大谷和利 
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 日本では、大企業の公式の発表資料なども、立派な文章で埋め尽くされているだけで、ビジュアルな情報がほとんど、あるいはまったくないケースがよくある。仮に写真などのイメージが配されていても、説明的でおざなりに感じられたりする。あるいは、現代社会で企業の顔として機能するウェブサイトでも、ビジュアル的な要素がないがしろにされている場合は少なくない。本当に「百聞は一見に如かず」という言い回しがよく使われている国の企業なのかと、首を傾げたくなる。

 企業のウェブサイトでは、商品ページにスタジオ撮影された小綺麗なカタログ写真が使われていても、会社概要などに移動して代表者の挨拶や施設の紹介を見ると、ビジュアル材料の質のお粗末さのせいで、途端に馬脚をあらわすことがある。それは、美しく飾り付けがなされたデパートで社員専用通路のうら寂しさを見たときのような、残念な光景だ。