[ボクシング]
杉浦大介「壮絶KO後に再び浮上した禁止薬物問題」

証拠はなくとも消えない疑惑の目

ラスベガスのMGMグランドガーデン・アリーナでの両雄の激突はいろいろな面で注目されるかたちになった。

 12月8日にラスベガスで行なわれたマニー・パッキャオ対ファン・マヌエル・マルケスの第4戦は、戦前の予想を上回り、世界中のスポーツファンを釘付けにする死闘になった。

 第3ラウンドにマルケスが右オーバーハンドでダウンを奪えば、第5ラウンドにはパッキャオが左でダウンを取り返す。最後は第6ラウンド終了間際にマルケスの右カウンターが炸裂し、激戦に終止符を打った。

 パッキャオが失神した壮絶なKOシーンへの反響は大きく、この試合はさまざまな媒体で取り上げられる結果となった。それ自体は業界にとっても良いはずだが、ただひとつつだけ残念なこともある。勝ったマルケスの栄誉を称える記事と同等か、それ以上に彼の薬物使用疑惑を取り上げた報道が目立つことだ。

 まず断っておくが、マルケスは規定のドーピング検査をパスしており、薬物使用の確たる証拠などどこにもない。今回の試合でのマルケスは見違えるようにパワフルに見えたが、階級を上げた近年は長い時間をかけた肉体改造に取り組んでおり、その成果が出ているとも考えられる。

 パッキャオをKOしたのは完璧なタイミングの“見えないパンチ”であり、パワーの有無に関わらず、あれを貰えばどんな選手でも倒れただろう。近年のスポーツ界では年齢を超越した偉業は、ほぼすべて疑いの目で見られる傾向にあり、今回のマルケスもいわば“犠牲者”と言えるのかもしれない。