「息子と僕のアスペルガー物語」 ライフ
奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第9回】
まったく悪気なく「ひどいこと」を言ってしまう理由

奥村 隆 プロフィール

僕には「場が気まずくなる理由」がわからない

 息子と同じASDである僕にも当然、同じような思考回路がある。

 そのことを改めて思い知らされたのは、ある日の深夜、テレビで一人、「大人の発達障害」を特集した番組を見ていたときのことだ。僕は医師から「大人の発達障害」だと告げられてから、意識的に、この問題を扱った本や雑誌記事を読んだり、テレビ番組を見たりするよう努めてきた。

 そんな番組の一つで、クイズのような「問題」が紹介された。僕は自分なりにその答えを考え、次に正解とされたものを見て、「自分の思考回路は多くの人と異なる」という事実を改めて突きつけられたのである。

 この問題は、医師が、患者が「大人の発達障害」かどうかを判断するときに使うものだということだった。僕なりにまとめると、以下のような内容になる。

【問題】

まず、次の文章を読んでください。

「Aさんという女の子の家に、おじさんが遊びに来ました。Aさんは、おじさんに食べてもらおうと思って、お母さんに手伝ってもらい、チーズケーキを作り始めました。

 作りながら、Aさんは、食卓で待つおじさんに言いました。

『私、おじさんのためにチーズケーキを作っているのよ』

 おじさんはこう答えました。

『ケーキは大好きだよ。チーズが入っているのはダメだけどね』

Aさんも周りの人たちも黙ってしまい、その場の雰囲気は一気に気まずくなりました」

ここで質問です。この場を気まずくさせたのは誰だと思いますか?

 この問題を読んだとき、僕は答えがわからなかった。と言うより、そもそも、なぜこれが問題になるのかが理解できなかった。

 「誰も気まずくなんかさせてないだろう」と考えたのである。問題の文章のような経過をたどった結果、その場が気まずくなることなど、想像もできなかった。

 ただ、しばらく考えて、きっと答えは「おじさん」なのだろうなと思った。それは、僕がこれまでの人生で、必死で「学習」を重ねてきたから推測できたことだ。