田原総一朗×勝間和代×安藤美冬 「メディア化する個人のジレンマ」 第1回「有名人になるということ、をあらためて考える」
[左から]高木新平さん(元「トーキョーよるヒルズ」編集長)、田原総一朗さん(ジャーナリスト)、安藤美冬さん(spree代表取締役/フリーランス)、勝間和代さん(経済評論家)

この対談は2012年6月、シェアハウス「トーキョーよるヒルズ」で行いました。

田原: 勝間さんの『有名人になるということ』という本を読ませていただきました。こういう本は普通、有名人は書かないものなんです、有名人である勝間さんが有名人になる秘訣を明かすというのはね。普通はみんなが有名人になりたいと思っているものでしょう。多くの人がそう思っている。だけど、有名人になるノウハウとかね、そんなことを書くのは恥ずかしいと思っている。

勝間: なぜですか?

田原: 勝間さんははずかしいとは思わなかったの?

勝間: 私は元々有名人になりたいとは思っていなかったんですよ。

田原: だって、今有名人じゃないですか。

勝間: それはこの本に書いたように、起業に失敗したからなんですよ。会社を起こしたんですが、お客さまが本国に帰ってしまって、全然お金がなくなってしまったので、新しいビジネスとして始めたんですね。

田原: 起業が成功していたら有名人になる必要はなかったんだけれども、起業が失敗したから有名人になった、と?

勝間: 有名人にならずにうまくいってお金が儲かっているんだったら、それに越したことはないと思います。

田原: ここに勝間さんが書いていることでおもしろいのは、「有名人になると金銭的メリットとしての収入は大したことがない。それはプライバシーの侵害とトントンだ」と。

勝間: ええ、アナリスト時代の友だちと会うと、収入の話になるんですよ。どのくらい儲かっているか、とか。私は証券アナリストだったので、アナリスト時代の友だちと会って「どのくらい儲かっているの?」という話になって、私が「こんな感じ」って言うとみんな笑いますから。

田原: 少ないの?

勝間: 少ないですね。「思ったよりも少ない」という感じです。

田原: それじゃあ、金融アナリストの人たちの年収はだいたいどのくらいあるんですか?

勝間: 少ない人でも数千万円、多い人で数億円ですね。バブルが崩壊してからもう少し下がっているみたいですけれども。

田原: 勝間さんだって数億円の収入があるでしょう?

勝間: それは会社の収益と私の収入の話は別ですから。

田原: 単に会社の形態を取っているというだけなんじゃないの?

勝間: 会社は会社で、私が収益を独り占めできるわけじゃないですから(笑)。

安藤: 会社から給料という形でもらっているんですよね。

勝間: オフィスもあるし、従業員もいますから。

いろいろ言われるのはしょうがない

田原: 安藤さんは、勝間さんとどこで出会ったんですか?

安藤: 勝間さんとの出会いは、前職の(株)集英社時代で2年程前になります。私はその頃宣伝部に在籍していて、勝間さんの新書の担当をさせていただいたんです。

田原: ちょっと聞きたい。その新書は何刷くらいいったの?

安藤: 確か、刷りで言えば5刷か6刷で、部数5万部を超えていたかと思います。『不幸になる生き方』というタイトルの集英社新書でした。

田原: 『不幸になる生き方』? だって、この人全然不幸じゃないのに、なんでそんなタイトルにしたの?(笑)

安藤:  一見、勝間さんが持つイメージからはかけ離れたタイトルですよね。

勝間: 実は集英社さんのほうにはかなり異論があったんですが、それを私が押し切ってつけさせていただいたタイトルで。

安藤:  これはある意味で、逆説的なタイトルなんです。『不幸になる生き方』と言えど、内容的には不幸を避けるための、つまり「幸せになる生き方」を説いている。

田原: それで宣伝を担当してつきあってみたら、勝間さんってどんな人だったのかな?

安藤: 実は、勝間さんの本を担当して、それから間もなく私は会社を辞めるんですよ。その本は退職の1、2ヵ月前に担当させていただいたんです。

田原: じゃあ、大して関わっていないんだ?(笑)

安藤:  2ヵ月くらいと短い間でしたけれど、以前から勝間さんの著書を愛読していたこともあって、この本を売りたいという思入れはすごくありました。新聞広告をもっと打ちましょうと上司に提案したり、色々な媒体に書評をお願いしたり。

田原: じゃあ、勝間さんと会ったことはなかったんだ?

安藤: ありますよ。神保町の三省堂本店で講演会をされた時にご挨拶させていただきました。

田原: あのね、物を書く人にはだいたい2パターンあるの。一つはやたらに威張る人で、もう一つはやたらに物腰が丁寧な人。勝間さんはどっち?

安藤: 後者ですね。ものすごく優しい方でした。先ほど申し上げたように私は勝間さんの本を担当させていただいて間もなく退社するのですが、その際にメールで「退職のご挨拶」を送ったらすぐに丁寧なお返事をいただいて。本を担当してくださりありがとうございました、食事をごちそうしますので是非お会いしましょう、と。勝間さんほどの多忙を極めた方が、その後本当に食事をごちそうしてくださって。あの時は本当に嬉しかったですね。

田原: ああ、勝間さんって威張らないんだ。本のイメージだと威張っている感じなんだけど(笑)。

勝間: よく言われんですよね、「ああ、怖くないんですね」とか。

田原: だって、この本でも「有名人になって嫌われる人、嫌われない人」というのがあるでしょう? どっちかと言うと勝間さんは嫌われるほうの人じゃないですか?

勝間: 私がいちばんありがたかったのは、Twitterで話をしているときに、私を直接知っている人で私のことを悪く言う人はいない、ということを書いていただいたことなんです。それは嬉しかったです。だから、私を知らない方にいろいろ言われるのはしょうがないかな、と。

田原: だけど、有名人ってほとんどの人から見れば知らない人でしょう。知っている人というのは精々数十人とか数百人、ということは、ほとんどの人に嫌われているわけね?

勝間: 嫌われているというより、いろいろな思いが錯綜しているんだな、という印象がありまして。

安藤: 多分、やっかみとか嫉妬、妬みの感情論だと思いますけどね。

田原: 安藤さんはこの本は読んだの? 感想はどうでした?

安藤: とても面白くて一気に読ませていただきました。有名人になるということへのメリット、デメリットが赤裸々に紹介されていて。中には私が現在進行形で体験していることも書かれていました。もちろん勝間さんは私よりも何十倍、何百倍もすごい方ですけれども、非常に共感させられると同時に、すごく身につまされる思いがしました。

田原: 安藤さんは第2の勝間、第3の勝間になりたい人の1人だと思うけれども、勝間さんから後輩の安藤さんに対して何か忠告しておくこととか、「こんなことをするな」みたいなことはあるの?

勝間: どうしても光と影が出てくるので、1万人、10万人の人々に注目されると、必ず何か言われるものですが、言われたことは実害がない限りほうっておくのが正解だと思うんですね。

田原: もう何か言われているんでしょう?

安藤: 私はたいして知られている人間ではありませんが、それでも色々と言われることはありますよ。とくに『情熱大陸』という番組に出て以降は「大フィーバー」でしたね。

田原: それで今安藤さんは自分の肩書きを何と言っているの?

安藤: 色々な仕事をしているので、「フリーランス」と名乗っています。メディアでは「ノマドワーカー」と称されることが多いですけれども。

田原: だけど、今は「ノマドなんて、それがどうしたんだ」とか言われているよ。

安藤: 言われているみたいですけれども、あんまり気にしていないですね。自分のスタイルを追及するのが大事ですから。

田原: だってノマドって単なるフリーランスのことじゃないの?

勝間: フリーランスとはちょっと違うんですよ。会社員でもノマドワーカーはいるので。

田原: どこが違うの?

安藤: フリーランスというのは以前からあって、スキルを持ち寄って会社組織に縛られず個人や企業と契約をして働く生き方ですよね。ノマドというのは、単純に言って時間や場所の制約を受けない働き方というスタイルです。

田原: じゃあ、僕だってノマドじゃないの(笑)。

安藤: 田原さんだってノマドですよ。

田原: それは知らなかったなぁ(笑)。

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