官々愕々
官僚が嗤(わら)う「政権交代」

〔PHOTO〕gettyimages

 自民圧勝で終わった衆議院議員選挙。12党が乱立して熱い戦いが繰り広げられた。

 選挙後にやるべきことは山積している。先延ばしになっていた補正予算と来年度予算の編成、3月中に日銀総裁の同意人事があり、日本の財政金融政策の大きな方向が決まっていく中で国会の果たすべき役割は大きい。参議院も含めて与野党の攻防が展開するが、これから本格化する与野党内部での戦いも要注目だ。

 自民党では、総選挙大勝利の実績を背景に、当面は安倍総裁の主導権は揺るがない。潜在的には、党内改革派と守旧派の争いはあるが、7月の参議院選までは、今回の総選挙大勝利の構造を守ることで大同団結していくだろう。TPPや規制改革・公務員改革の大玉のような改革路線に取り組むよりも、金融大幅緩和と国土強靭化計画のばら撒き戦略を中心として、短期的な景気回復に全力をあげる方が得策だから、難しい改革政策は先送りということになる。

 こうした事態を防ぐには、野党と世論による旧来型政治復活への批判が必要だが、野党に多くを期待するのは難しそうだ。

 民主党は、野党になった方が生き生きとする議員が多いが、民主党がいくら自民批判を繰り広げても、まともに相手にする人はいない。そもそも、民主党と自民党はともに大きな政府を目指す点で大差なく有効な批判もできない。しかも、総選挙大敗を受けて、お家芸の党内権力闘争に時間を費やすことになるから、多くを期待するのは無理な話だ。

 民主に代わる勢力として期待された日本維新の会も、選挙戦では石原、橋下ツートップで世間の耳目を集めたが、国会が舞台になると目立つ役者は石原氏だけ。しかも、同氏が活躍すれば橋下維新との政策の違いが際立つだけだから、皮肉なことに、石原氏の出番を少なくすることが重要になってくる。さらに厄介なのは、片山虎之助氏ら旧たちあがれ日本メンバーとの対立だ。

 維新の選挙公約は、たちあがれ議員によって骨抜きにされた。彼らは、それを盾にあらゆる改革的政策への抵抗を続けるだろう。橋下氏は、選挙後は旧たちあがれメンバーと戦っていく意向だろうが、自身が国会議員でないので、彼らの動きを制御することは難しい。片山氏らは参議院で自民党と統一会派を組んでいる。夏の参議院選挙まで片山氏らが橋下氏への面従腹背を続けるのか、袂を分かって自民党と合流するのか。こんな戦いを続けている限り、維新人気は下がる一方となりかねない。

 一方、議席激減の未来の党は解党さえ視野に入る。選挙のために小沢氏と組んだ嘉田氏と飯田氏が、小沢氏の勢力と袂を分かつ決断が出来なければ、ジリ貧傾向継続は不可避だ。

 そんな中、みんなの党は、「ぶれない第三極」というイメージは確保したが、維新と石原氏の合流のあおりを受けて、期待されたほど議席は増えなかった。

 こうした状況は、官僚には極めて好都合だ。おそらく、これまで検討していた官僚復権のプログラムをいっせいに繰り出してくるだろう。もちろん、国民に気づかれないように息を潜めて用心深くではあるが。よほど注意していないと自民党守旧派が官僚と組み、従来の政官財癒着のトライアングル復活・強化が進んでしまうだろう。

 再び政権交代という「変化」を選択したかに見える有権者は、実は「変われない日本」を選択してしまった。「振り出し」に戻った「政界再編すごろく」。同じ轍を踏まないためには、維新と未来が不純分子と決別し、みんなとともに新しいすごろくを始めてもらいたい。

『週刊現代』2013年1月5・12日号より

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