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朝鮮半島スクープレポート
金正恩はなぜミサイルを発射するのか
追いつめられた「子ども第一書記」

「銀河3号」の開発費で、北朝鮮の全国民に3年間、トウモロコシを供給できる〔PHOTO〕gettyimages

「ミサイル発射は金正恩の本意ではない」---こう断言するのは、7月に金正恩と4時間の午餐を共にした「金正日の料理人」藤本健二氏だ。発足から1年になる金正恩体制が、早くも危機を迎えている。

別人のようになってしまった

「今回の長距離弾道ミサイルの発射実験は、巷間言われているような金正恩第一書記が自らの威信を示すためのものではなかった。金正恩は、今回の発射実験には反対していた。だが、朝鮮人民軍の強硬派が強行するのをストップする権限さえも、もはや持ち合わせていないのだ」

 こう解説するのは、中国の外交関係者だ。

 北朝鮮が、平安北道鉄山郡東倉里からフィリピン沖へ向けた発射を準備していた長距離弾道ミサイルに、再び日本を始めとする東アジアが振り回された。

 北朝鮮当局は当初、10日から22日の間に発射すると発表していたが、9日未明になって発射延期を示唆する発表を行った。これは、その数日前の大雪などによる技術的な原因なのか、それとも金正恩第一書記の強い意思が働いたのか。いずれにしても発射実験は行うものと見られる。

 北朝鮮の中長距離弾道ミサイル実験は、'93年、'98年、'06年、'09年、そして今年4月に続く6回目のことだった。実験のたびにミサイルの性能はバージョンアップされ、射程距離も着実に伸びている。今回の射程距離は、アメリカ本土まで届く1万・に達したとされる。

 また、'06年と'09年の発射実験は、核実験とワンセットになっていて、ミサイル実験後まもなくして核実験を強行している。このため、来年早々にも、3回目の核実験を強行する可能性がある。北朝鮮は、先代の金正日総書記の時代から、核弾頭を搭載したアメリカ本土まで届く大陸間弾道弾の実戦装備を目標にしていたからだ。

 北朝鮮は、12月17日に、金正日総書記の死去1周年を迎え、平壌では大々的な記念行事を予定している。それだけに、日本を始め各国メディアは、今回の長距離弾道ミサイルの発射実験を、金正日総書記の死去1周年と、金正恩時代の到来を告げる「祝砲」との分析をしている。

 だが、冒頭のように、中国は別の見方をしている。この外交関係者が続ける

「金正恩は、物騒なミサイル実験や核実験などやめて、早くアメリカや日本と国交を正常化させ、中国式の改革開放政策を断行したいと考えている。ところがこのところ、朝鮮人民軍強硬派からの圧力は増す一方だ。いまや軍の傀儡となるか、さもなければ軍のクーデターに遭うかだ」

 北朝鮮の動向を日々ウオッチしている「韓国のCIA」こと韓国国家情報院の関係者も、同様の見方をしている。

「今年後半の金正恩は、今年前半とは、別人のようになってしまった。今年前半は、軍の強硬派を蹴散らして、経済改革を行うという意思が明確だった。ところが後半になると経済改革構想は完全に失速し、いまやいつクーデターに遭ってもおかしくない状況だ」

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