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二宮清純 レポート インタビュー 阿部慎之助
本物のプロになるのはこんなに難しい
「やっと捕手の面白さがわかった」

2013年01月01日(火) 週刊現代
週刊現代

 そう前置きして日本ハムベンチにいた投手コーチ(今季限りで退団)の吉井理人はこう話す。

「シリーズ前から阿部をいかにして抑えるかがテーマでした。阿部が厄介なのは状況によってバッティングを変えてくるところ。石井に対しては、もうあそこ(二遊間)しか狙っていなかった。ゴロのピッチャー返しで抜くんだと・・・・・・」

 この執念の一打に阿部の成長を見てとったのが代表監督の山本である。掛布が〝ミスタータイガース〟なら、こちらは〝ミスター赤ヘル〟である。

「4番として、あれだけ厳しくマークされながら、ここぞという時に勝負を決められるのはたいしたもの。勇気と決断力と集中力。これがなければ難しいボールを一球で仕留めることはできません。

 これは僕にも経験がありますが、心技体の技と体は若くても、ある程度、極められる。問題は心。彼は今、心技体ともにピークの状態にあるんじゃないかな」

 18・44m先の相手は今の阿部を、どう見ているのか。阿部がルーキーの年から対戦している中日のベテランサウスポー山本昌に話を聞いた。

「正直言って昔はそんなに怖いバッターではなかった。左対左ということもあったでしょうが、インハイのシュートには詰まっていた。またアウトローにも弱く、真っすぐかスライダー、カーブを投げておけば、ほぼ振ってくれましたね。

 ところが近年は、そういうボールで抑えることができなくなった。以前ならファールだったはずのボールが確実に打ち返される。ミスショットが極めて少なくなりましたね。

 これまで僕が対戦した中では松井秀喜クラスに成長したと言っていいでしょう。いや、今年に限っては打率が稼げる分、松井より上かなというレベルでした」

一球一球に根拠を持て

 今季、ホームランを除いてキャリアハイの数字を残した理由は他にもあった。阿部の手記からそれを探ってみよう。

〈橋上戦略コーチの影響も大きかった。「捨てる打席は少なくして、自分の持っている技術を出したら絶対にタイトルを取れるぞ」と言ってくれた。「敵として見ていて、もったいない」とも。自分の中で「プッチーン」と何かがはじけたような、目覚めた感じだった〉(スポーツ報知9月22日付)

 周知のように橋上秀樹は野村克也の門下生だ。現役時代は野村の下、ヤクルト、阪神でプレーし、東北楽天ではヘッドコーチなどを務めた。

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