二宮清純 レポート インタビュー 阿部慎之助
本物のプロになるのはこんなに難しい
「やっと捕手の面白さがわかった」

 彼は長く「天才」と呼ばれ続けてきた。そして今季、捕手としての史上最高打率を残し二冠王に輝く。彼は長く「未熟」とされてきた。だが今季、そのリードは投手陣にリーグ一の防御率を残させ、日本一の立て役者となった。マスクマン覚醒の秘密に迫る。

敵を仕留める仕事

「彼のこれまでの実績、今シーズンの十分な働きは、ご存知のとおり。彼ならチームをまとめてくれる」

 ここまで頼りにされれば、よし、オレに任せておけという気にもなるだろう。オレがやらずに誰がやると。

 巨人の捕手で4番の阿部慎之助が、来年3月に開催されるWBC日本代表のキャプテンに指名された。

 代表チームの指揮を執る山本浩二は「チームの中心は阿部。彼を措いて攻守の軸はいない」と全幅の信頼を寄せる。「捕手は監督の分身」とは捕手出身の名将・野村克也の言葉だが、今季の阿部の活躍を見れば誰もが頷かざるを得ないだろう。

 獲りも獲ったり7タイトル。MVP、正力松太郎賞、首位打者(打率3割4分)、打点王(104打点)、最高出塁率(4割2分9厘)、ベストナイン、最優秀バッテリー賞(内海哲也との受賞)。巨人の・5冠・(交流戦、レギュラーシーズン、クライマックスシリーズ、日本シリーズ、アジアシリーズ)は阿部の存在を抜きにしてはあり得なかった。

「4番は慎之助。ある種、慎之助のチームであるわけだから」

 阿部の2012年シーズンは、原辰徳監督のこの言葉からスタートした。

 本人の気持ちはどうだったか?

「監督は前から、そう公言されていましたし、僕もその気持ちでキャンプに臨みました。開幕から1ヵ月くらいは4番でしたが、途中で5番に下がり、8月にまた4番に戻りました。その時に直接、〝4番で行く。頼むぞ〟と言ってもらった。

 僕にとって4番という打順は集中力を維持する上でも良かった。これまで下位を打っている時は、点差が開いたりすると集中力が切れる時もあった。初球をポーンと打ち上げたりね。

 でも4番は、そういうわけにはいかない。点差が開いても、最後の打席でヒットを打っておこうとか、次の日のためにボールをたくさん見ておこうとか。たとえ結果が出なくても、相手投手に一球でも多く投げさせれば、翌日以降、ウチに有利に働きますからね。4番になることで、そういうことをより意識してできたのではないかと思います」