「非バトルタイプ」として生きる
「初めは大儲けできなくても、仕事は育つんです」
伊藤洋志さん【第2回】

[左]米田智彦さん(フリーエディター)と、[右]伊藤洋志さん(「ナリワイ」主宰)

第1回はこちらをご覧ください。

「きちんと仕事に就ける教育」をやろうと思った

米田 ライター業、モンゴルツアーと来て、その次の伊藤さんのナリワイ(仕事)は何だったんですか?

伊藤 モンゴルツアーは旅行に関する不満から始まったんですが、その次に作った仕事は、学校に対する不満から始まったものと言えます。僕自身は、大学に行ってよかったと思っているんですけど、専門学校など、就職を目的とした学校の話などを聞いていると、非常に就職率が悪いんです。

 「就職率100%」と謳っているなど、表面上はいいんですが、実は派遣労働が含まれていたり、習ったこととまったく関係ないところに就職したり、といったケースも多くて・・・。たとえば服飾関係にそういうケースをよく見ますね。

米田 ファッションの専門学校は東京にたくさんありますが、全員がファッションデザイナーになれるわけではない。普通はアパレルメーカーとか、デパートの服飾部門、あるいは服飾の店舗などに就職すると思いますけど。

伊藤 最近聞いたら、それすらも生徒のわずか1割、30人中3人くらいしか服飾デザインの勉強が生きる職種に就けなくて、残りは全然別だと言います。服飾でも、服飾雑貨の倉庫管理の仕事とか、一見似ているけど、本当はまったく違うところに行かざるを得ないわけです。

 倉庫の管理を専門に学んだ人が、洋服の倉庫を管理する会社に行けばいいと思うんですけど、そういう訳ではない。これってゆるやかな詐欺じゃないかな、とも思うんですね。でも、そうなることはある意味で自明で、ファッションの専門学校で教えている人たちは、現役バリバリのファッションデザイナーではないことが多いんです。

 彼らはファッションデザイナーになるための勉強を教えるのでなくて、服の作り方を教える。どうやってデザイナーになったらいいかというのは、あまり教えてくれないことが多い。もちろん、現役のデザイナーが教えてくれる学校もあると思いますけど・・・。

 こういうことって、別にファッション業界に限らないでしょう。税理士の学校で教えている人の中には、税理士として開業し損ねた人が結構いるというのと同じで。

米田 ハハハ。

伊藤 「お客さんが全然取れなかったから、とりあえず講師でもやるか」というケースですね。このように、教育を専業にすることには、若干の"詐欺性"があるわけです。本人がやっていないのに教えてどうするのって(笑)。そもそも、教えるのを専業にすることに歪みがあるんじゃないかと。

米田 なるほど。伊藤さんは教育を専業にすることに疑問を感じ、本当に役に立つ、きちんと仕事に就ける教育というものをやろうと考えたんですね。

伊藤 『増刊現代農業』の取材で、和歌山県で土窯でパンを作っている方にお会いしたことがあります。なかなか面白い方で、「伊藤君はモンゴルのツアーをやっていると聞いたんだけど」とか言い出して、そこから「田舎暮らしツアーを考えてくれんかね?」という話になったんですよ。"ナリワイ連鎖"が始まったわけです。

米田 結構な無茶振りですね(笑)。

伊藤 「若者がもっと田舎に来るようなことをしてほしい」と頼まれまして。

米田 一見、田舎のおじさんがポッと考えて言いそうなことですね。

伊藤 突然、田舎暮らしツアーと言われても、全然思い浮かばなくて・・・。でも、そのおじさんはすごく勝算あり気な顔つきで、僕のことを「こいつに投げたら、何とかするだろう」とずっと思っていたみたいなんです。

 で、自分なりにいろいろと考えた結果、とりあえず「田舎暮らしツアー」ではざっくりしすぎているから、もっと絞り込もうと、「田舎で土窯のパン屋を作る学校をやろう」と考えました。そのおじさんはすでにパン屋をやっているから、会場と専門学校の校舎を建てなくても場所はあるし、先生もいる。

 ただし、先生を雇用しなくていい形がいいというか、おじさんは普段はパン屋さんなので、先生専業になってほしくなかった。そういう風に、「たまに習いたい人を集中的に教える学校をしたらいいかな」と思って始めたのが、3個目のナリワイなんです。世の田舎暮らしツアーの中では高い値段設定で、1週間で15万円くらいですけど。

米田 価格だけ聞くと、高いと思っちゃいそうですね。

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