読書人の雑誌『本』
『「魅せる声」のつくり方』著:篠原さなえ
「魅せる声」をつくる三大新理論

 短大とアナウンサー系の学校のダブルスクールをしながら、十八歳から芸能の仕事を始めた私は、どの現場でも一番若く、下手でもそれなりに重宝がられていた。ところが二十一歳を過ぎると、「若い」というアドバンテージがなくなってくる。そこで私は考えた。

「もっと技能を身につけなければ・・・・・・年齢を重ねても長くやっていける仕事はなんだろう? そうだ、声の仕事だ!」

 顔は老けても、声は大して老けないという。よし、声優の勉強をしよう!こんな実に単純な発想で声優の先生のレッスンに通いはじめるが、そこで自分の甘さを思い知らされる。

「おまえみたいな滑舌と鼻声で、声優になれると思ってんのか!」

 正直、タレント時代には滑舌で困ったことなどなかった。しかし、表情やしぐさでカバーできる役者やタレントと、「声」だけで勝負する声優では、求められるものが根本的に違っていたのだ。

 そんなことにやっと気づき、歯を治し鼻炎を治し、さらに芝居を学んで、さあこれでいけるだろうと思ったころ、「業界№1」声優事務所のマネジメント部長を紹介された。これはチャンスと会いに行くと、待っていた答えはショッキングなものだった。

「え?もう二十三歳なの?そんなたたき売りのクリスマスケーキみたいなの、うちじゃとらないよ」

 ガラガラガシャーン。いきなりシャッターを下ろされた。年をとってもできる仕事だと思っていたら、なんとタレントよりも早い店じまいだったのだ・・・・・・(涙)。まさか声優業界がそんなところだったとは、思ってもみなかっただけに、ショックは大きかった。

 幸い二十三歳の終わりにアニメ声優デビューをはたすことはできた。しかし主役を演じる子たちの多くは自分より年下。なのに声優としての技能、経験値は私のほうが下だ。クリスマスケーキの謎が解けてきた。「私、声優としてどれだけやっていけるんだろう?」。

 
 
◆ 内容紹介
「声」の常識をぶちこわす! 呼吸、発声、滑舌の新理論から母音・子音のつくり方、無声化、鼻濁音、アクセントまでわかる画期的教本