企業の業績向上には自助努力が第一だ! 安倍新政権には「新たな価値」を生み出す好循環の経済浮揚策を考えてもらいたい
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 総選挙で自民党が大勝し、安倍晋三首相の誕生は確実となった。選挙戦突入前に安倍氏が金融緩和策を打ち出したことで円安に振れて株価は上昇、「安倍相場」とも言われた。不況に喘ぐ人たちが景気回復に期待を寄せて安倍自民党を支持したのであろう。

 日本の製造業の「4番バッター」であるトヨタ自動車は2013年3月期決算で為替レートを1ドル=79円で想定している。外貨売上高の大きいトヨタの場合、ドルに対してわずか1円の円高で営業利益が350億円吹っ飛ぶ。12月17日の為替相場は1ドル=84円程度で動いていたので、仮にこの水準で推移すれば、トヨタの営業利益は5円の円安によって約1,450億円も増える計算になる。

 トヨタは11月5日に発表した2013年3月期決算の通期予想では1兆500億円の営業利益を見通しており、この円安水準であれば利益を10%程度押し上げることになるだろう。

 輸出や外貨売上高の多い企業にとって円安は、利益を上げる「即効薬」のように見える。今年9月、日産自動車のカルロス・ゴーン氏にインタビューした際に、日本の電機メーカーの経営はなぜダメになったのかを聞いたら、即座に「円高」と答え、「競合企業と比べて為替で不利な条件にある」との見解を示した。韓国のサムスンやLGがこれまでウォン安の利点を享受していたのに対して、日本の電機メーカーは円高で苦しんでいるという意味だ。

全体最適の車づくりを目指したトヨタ

 筆者はマクロ経済の専門家ではないが、長らく自動車や電機産業の経営をウオッチしてきた経験から、円安は短期的には企業の業績を上向かせるが、長い目で見ると円高が必ずしも悪とは言えない部分があることを強調しておきたい。企業経営は短期と長期の両面で考えなければならないし、企業経営にとってより大切なのは、戦略を目まぐるしく変える必要がないよう、為替が安定していることの方である。

 トヨタの役員はかつて「行き過ぎた円高も困るが、円安になってもそれが『皮下脂肪』となって、痛みを感じなくなり、企業が自助努力でやるべき課題が見えづらくなる」と語ったことがある。

 プラザ合意後の急激な円高とバブル崩壊が重なって、1990年代初頭は日本の多くの製造業が苦しんだ。トヨタでさえも赤字寸前だった。そこで、トヨタは仕事の進め方を抜本的に見直した。「BR(ビジネス・リフォーム)」という大胆な組織改革の手法を導入し、開発や生産、調達、営業など社内のあらゆる部署から人を引き抜き、経営企画部内に「BR収益管理室」というプロジェクトチームを設置した。同室の役割は、機能横断的にチェックしながら全体最適の車づくりを目指すことだった。

 日産自動車は1999年にゴーン氏が来日して、「クロス・ファンクショナル(機能横断)チーム」を設置。部門の壁を取り払って全体最適に仕事を進める改革を推進し、約3年間で総額1兆円のコストを下げてしまった。この動きを見て、トヨタのある副社長は「クロス・ファンクショナルはトヨタが元祖だ」と言った。BR収益管理室のことを指してのことだった。

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