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死ぬ瞬間はこんな感じです。死ぬのはこんなに怖い

医者は本当のことは言いません
週刊現代 プロフィール

「最初に搬送された病院では手に負えず次の病院に向かう際、ふと意識が戻り、医者が家族に『もうあきらめてください』と言っている声が聞こえ、怯えました。手術室の照明は今でも覚えています。この灯りが見えなくなったらオレは死ぬと言い聞かせて目を見開き、術中は『麻酔をしてくれ』と叫び続けたつもりなのですが、実際には声は出ておらず目も閉じていたそうです。再び意識が戻ったのは事故から3日後、集中治療室でのことでした」

 生と死の行き交う医療現場で働く医師たちは、しばしばこういった患者たちの「臨死体験」に遭遇する。

 ホームオン・クリニックつくば院長で『看取りの医者』の著者である平野国美氏はこう語る。

「死の淵から生還されたあと、〝三途の川を渡りかけた〟〝キラキラ光る世界が見えた〟とおっしゃる患者さんは何人もいます。ここで死ぬんだと思っていると、突然、ほっぺたを叩かれたような感じで、こちらの世界に引き戻されるらしい」

 にわかには信じられないが、実は臨死体験をしたと語る人の体験談を聞くと、その内容には多くの共通する部分があるのも事実だ。

 アメリカの心理学者であるケネス・リング氏は自著『Life at death』で臨死体験のある102人の男女にインタビューをしている。それによれば、彼らは「光に向かう」「死を自覚している」「暗闇やトンネルに入る」「自身が身体から離脱する感覚がある」「(死んだ知人などの)人物、影を見る」「痛みの消失」など幾つかの核となる共通の体験をしているという。

 例えば、前述した「光」について、呼吸困難から生還したアメリカ人女性はこう語っている。

〈私は原っぱにいました。広い何にもない原っぱです。丈の高い、金色の草が生えていて、それがとっても柔らかくて、輝いていました。(中略)気持ちの休まる光でした。草は揺れていました〉

 育った国も、臨死状態に至った原因も異なるのに、なぜ人間は死の間際に同じような風景を見るのか。

 前出の平野氏はこの現象についてこう分析する。

「人はある種のショックを受けた時、痛みを感じなくさせるために脳内麻薬を分泌します。昏睡状態に入る際も作用し、それが出た状態で見える世界が日本では三途の川と言われる世界だと思います」

 なかなか明快な答えは出ないが、先のリング氏のインタビューに応じた人のうち、実に70%もの人が臨死体験中に恐怖を感じることはなく、むしろ安らぎを覚えたと語っている。この事実は死を怖いと感じる人間にとっては、怖さを和らげる一助にはなるのではないだろうか。