常勝・日ハムを作った男高田繁インタビュー
強い組織をつくるのは難しいそれを維持するのはもっと難しい

週刊現代 プロフィール

負ければ造反者が出る

 それ以後も2度優勝、Bクラスに落ちたのは1度だけと、常勝軍団に育った日ハム。新生DeNAが彼に白羽の矢を立てるのは当然の結果であった。

「実は何度もお断りしたんですよ。'10年にヤクルトの監督を辞めたのを機に、球界から引退するつもりでいたんです。日ハムでは経営のトップである球団社長、人事部門のトップである編成部長、現場のトップである私の3部門の分業制が確立していた。私は選手の技量や将来性を判断し、評価をしさえすれば良かった。ゼロから始めるベイスターズとは、まったく状況が違っていた。激務に耐えられないと思ったのです」

 それでも引き受けたのは、理想とする、米国型に近い、全権委任型のGMとしての働きを期待されたからだ。

「就任したのがドラフト後の12月だったので、昨季のドラフトにはタッチできませんでしたが、監督とコーチの人事はすべて私が決めた。今年はドラフトもトレードも戦力外選手の選定もすべて任されました。若い池田純社長にアドバイスをしながら、理想の組織作りに着手できている。ここまで任されているGMは初めてでしょう。ゼロからスタートした球団だから責任も感じるし、やりがいもある」

 強い組織を作るのは難しいが、高田氏には自信があったはずだ。そのうえ、強い組織を維持していくことのほうが難しいと分かっているからこそ、結果がすべてのプロ野球界にもかかわらず、あえて「数字を残さなくともいいから」と数人の若手を一軍で使い続けた。その中の一人、21歳の長距離砲・筒香嘉智は108試合に出場し、2割1分8厘、10本塁打という成績を残している。

「筒香はおとなしく、三振を怖がるところがあった。ただ、試合に出し続けたことでだいぶ、思い切りの良さが出てきた。今後の補強にもよりますが、彼に7番あたりを打たせられれば、よりバッティングが生きると思います。このまま試合数を重ねていけば素晴らしいスラッガーになるでしょう。ドラフト1位で内野手の白崎浩之が入ったことで競争意識が芽生え、戦力アップに繋がると思います」

 経営トップと現場が一枚岩になることで実現するブレないビジョン。GMへの権限集中が生む素早い意思決定。主観の入らない数値評価システムを使った効率的で集中的な人材育成。強い組織づくりはDeNAにおいても、着実に成功しつつある---かに見えた。だが、高田氏は首を振るのであった。

 奄美大島で11月下旬まで行われた秋季キャンプ。

 中畑清監督は自らノックバットを持ち、あるいはバッティング投手として白球を投げ込み、文字どおり朝から晩まで若手と野球漬けの日々をおくっていた。冒頭の「クビ宣告」はここで飛び出したものだ。

「叱咤しながら、本当に反吐が出るまでノックをやめなかった。人の良い中畑が〝鬼〟になっていましたよ。誰より今季の結果を悔しがっているのは彼でしたから。ただ、あの戦力で優勝しろというほうが無理だった。中畑は私にこう言いました、『来年は負けた言い訳ができないような補強をしてください』と」

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