自分で自分の「ナリワイ」を作る
「素人だから、新しい仕事を立ち上げられるんです」
伊藤洋志さん【第1回】

[左]米田智彦さん(フリーエディター)と、[右]伊藤洋志さん(「ナリワイ」主宰)

長いスパンで見たら、仕事をいくつも持っている方が普通

米田 こんにちは。今日は連載対談「生活実験者に会ってみた!」の第2回のゲストとして、今年、『ナリワイをつくる 人生を盗まれない働き方』を出版された、仕事づくりレーベル「ナリワイ」(http://nariwai.org/)主宰の伊藤洋志さんに来ていただきました。

伊藤 よろしくお願いします。

米田 よろしくお願いします。僕と伊藤さんが深く話をするようになったきっかけは、実は「3.11」でした。僕が2011年、「ノマドトーキョー」という生活実験企画で東京を放浪するということをやっていたときに、伊藤さんが住んでいる東京・武蔵小山のシェアハウス「スギコハウス」に泊まっていたんです。

伊藤 一応、シェアハウスとしての名前はありますけど、普通のルームシェアですねえ。

米田 そのときに東日本大震災が起きた。2日間くらいの滞在予定だったのが、状況がどうなるかわからないので閉じ込められるような感じになって、結局、それから数日間、滞在させてもらうことになってしまって。

伊藤 そうでしたね。1週間くらいでしたね。

米田 僕は1月11日から生活実験企画を始めていたので、ちょうど2ヵ月目で震災に遭い、ノマドトーキョーを中断せざるを得なかった。やっぱり、被災者が何万人と出ている中で、自分で「家を捨てた」などと言える状況ではありませんでした。

 伊藤さんのところにお邪魔しながら、そういった震災を共に体験したり、いろいろあったんですけど、一応、その前にもお会いしていたんです。そのときに伊藤さんの「ナリワイ」っていう活動を知って、「すごくユニークだな」って思って。

 自分で自分の仕事を作っていくだけじゃなくて、自分の欲しいものをできるだけDIY(Do It Yourself=自分で作ること)でやっていく。さらに、仕事を一個に絞り込まずに複数やっていく。そんな生き方を実践している人がいるんだということをリアルに知って、驚いたんです。

 それで、改めて、「ナリワイ」という活動を始めたきっかけからお話ししてもらえますか?

伊藤 きっかけはいろいろあるんですけど、実家が香川県なんで、就職活動を始めたとき、就職サイトで香川県の求人を検索したんですよ。そうしたら、銀行と電力会社ぐらいしか出てこなくて、「地元に自分がやりたい仕事がない」という事実に愕然としたんです。そこで、何となく「仕事は作らないとダメなんだ」と思い始めました。

米田 大学は京都大学で、大学院まで行ったんですよね?

伊藤 はい。修士課程までです。

米田 大学で専攻されたのは森林学科だったとか。

伊藤 いわゆる林業というのをやっているところでしたが、これがまた就職が厳しい。環境問題の勉強をしたかったから入ったんですけど、「ここは昔、林業のために作られた学科だから」とか言われて・・・。

 それはそれで面白かったんですが、林業を勉強してもほとんど就職先がないわけです。住宅メーカーに行く人がいるくらい。就職活動を何社か経験すると、自分の理想とする仕事は探しても見つからなくて、「これは作るしかないな」という気持ちになってきました。

 学部は農学部だったのですが、日本の農村の歴史とかに興味を持って、宮本常一さん(民俗学者)や網野善彦さん(歴史学者)といった人たちの本を読んでいました。すると、「昔の人はすごく面白そうな生活していたのではないか」ということに気づき始めた。少しだけ古文書も読みました。そうしたら、農民が連名で「農閑期に湯治に行きたいです」という申請書を代官に出すなど、意外に長期休暇を取っている、なんてことがわかってきました。

 もちろん、当時は農業技術もまだ低いし、いろんな面で大変そうではあるんですけど、昔の日本人は仕事を何個も持って生活していたということを知って、「もともとはこんなもんだったんだな」と思うようになりました。

 林業も、戦後にバブルが起きて杉を全国で植えまくった結果、今は採算が取れなくなって困っていますが、そもそも専業で林業をやれていたところなんて、あんまりないんじゃないかと思います。だから、専業でやって採算が取れないというのも、ある意味では当たり前。

 これに限らず現在は、仕事に関するスタンダードがちょっとずれていて、長いスパンで日本を見たら、仕事を何個も営んでいる方がむしろ標準だという感じがしてきたんです。

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