奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」
2012年12月15日(土) 奥村 隆

奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第8回】
息子を大爆発させた妻の一言

upperline

【第7回】はこちらをご覧ください。

この世が終わるほどのショック

 先週の土曜日、その事件は起きた。

 久しぶりにゆっくり寝られる休日の朝なのに、僕は、誰かが叫ぶような泣き声で叩き起こされた。不快な気分で目を覚まし、改めて耳を澄ましてみると、それは息子の泣き声だった。それも、何らかのきっかけで突然パニックに陥ったときに出す声に違いなかった。

 息子にとって休日とは、学校という〈他人と必然的に関わらなければならない場所〉に行かなくてすむ日だ。ASD(自閉症スペクトラム障害)を抱える息子には、何よりも心地よい一日のはずで、いつもなら朝からニコニコと笑顔を絶やさず、終日、機嫌よく過ごしている。

 そんな休日の朝にパニックになっているというのは、余程のことが起きたに違いなかった。しかし、僕はあえてすぐに息子のところに行かなかった。息子と一緒に妻がいるはずだし、僕がびっくりして駆けつけたりすると、彼のパニックの火にさらに油を注いでしまう可能性がある。それよりも、息子がこちらに来るのを待っていた方がいい。

 「でも、こんな朝早くから、いったい何があったというんだろう・・・」

 あれこれ想像を巡らせながら、固唾を呑んで布団の中でじっとしていると、案の定、息子がシクシクと泣きながら寝室に入ってきた。そして僕の前に立つと、自分の身に降りかかったばかりの"大事件"を、しゃくりあげながら説明し始めた。

 「ねえ、お父さん、聞いてよ。お母さんが『今日の午後、塾に行きなさい』って言い出したんだ」

 おいおい、そんなことの何が問題なんだ? お前はすでに塾に通っているじゃないか---と僕は反射的に考えたが、息子はそんな父親の思いに頓着する様子もなく、

 「いったい、僕はどうすればいいの~!」

 と号泣している。

次ページ  息子は今、近所の小さな学習塾…
1 2 3 4 5 6 7 8 次へ

このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
関連記事


underline
アクセスランキング
1時間
24時間
トレンドウォッチ
編集部お薦め記事