賢者の知恵
2012年12月14日(金)

アメリカでは認可が始まった「夢の治療薬」、日本では未承認の怪しげな高額療法・・・いったいはどちらが本当か

上昌広(東京大学医科学研究所特任教授)

upperline

第1回はこちらをご覧ください。

大手製薬会社が開発競争を始めた

 「がんワクチン」は進行がん患者にとって希望の星だ。

 外科療法(手術)、化学療法(抗がん剤)、放射線療法の、いわゆる「標準療法」をうけてもなお、体内にがんが残っている患者は、それ以外のがん治療を必死で探す。しかし、この国では、最新のがん療法にアクセスするためには、たまたまかかった病院の医師が親切で先進医療に詳しいという僥倖に出会うか、そうでなければ、家族や周囲の人たちからのクチコミや、インターネットで検索するほか手だてがなく、そういうなかで、偶然ネットでヒットした「ワクチン療法」に頼る人は少なくない。

 この国では「ワクチン療法」は水ものなのだ。「悪徳医師が患者を騙してカネ儲けをしている」、「エビデンスがない(効くか効かないかわからない)のに高額すぎる」、「国が許可した治験として行うべきだ」などなどいかがわしさがつきまとう。筆者は、一連の批判や、ワクチンへの疑義のまなざしは、我が国の医療行政と医師のモラルのありようを象徴していると考える。

 つまり、前回で紹介したとおりアメリカでは、「がんワクチン」が、がん征圧のための「切り札」として位置づけられ、大学、研究機関、巨大製薬会社が、副作用もなければ外科手術のように身体に負担をかけることもない「夢の治療薬」=がんワクチンの開発にしのぎを削っているのに引き比べ、日本では、依然として、未承認のいかがわしい療法という世間の風評しかない。

 たしかに、じつにさまざまながんワクチン(免疫細胞療法)が喧伝されまた施療されていて、どれもが著効があると謳ってはいる。これらのワクチン療法が国(厚労省)に咎められたということを効いたことはないが、かといって、国ががんの新薬として認めたという話も皆無である。いわば野放し。だからみな眉唾だとみるのは賢明に違いない。

がんワクチン治療革命
著者:中村祐輔
講談社 / 定価1,470円(税込み)

◎内容紹介◎

中村教授が長年取り組んできた、がんの新薬=がんペプチドワクチン驚異の臨床報告。アメリカで「第4の療法」としてついに本格的に位置付けられたワクチン療法(特異的免疫療法)の開発の最前線で、末期がんが消えた! という驚くべき臨床例が。「私は最後まで希望を捨てません。だから、けっしてあきらめないで戦ってください」---世界のナカムラが、がん患者に「希望」を届けたい一心で開発した「がんペプチドワクチン」。巷にあふれる科学的実証がされていないワクチン療法と、どこが違うのか---がんと戦う勇気の出る治療最前線を紹介します。
次ページ  なぜ、日米でこれほどまでに「…
1 2 3 4 5 6 次へ

このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
関連記事


underline
アクセスランキング
1時間
24時間
トレンドウォッチ
編集部お薦め記事