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宮城県「雄勝・希望のキャンバス」を彩る井上雄彦の絵
完成した壁絵の前で挨拶をする井上雄彦さん。雄勝は日本有数の硯の名産地。墨で絵を描く井上さんと縁の深い土地とも言える
壁の中央に足場を組み、絵を描いていく。隣には今も自宅に帰れない元住民らが故郷への思いを書き込んだ

 宮城県石巻市雄勝町は、東日本大震災で津波に襲われ壊滅した町の一つだ。その荒浜海水浴場に、高さ4m、幅40mの巨大な壁が作られた。

「あの津波で行方不明になった人は3000人近くに上ります。鎮魂の気持ちや、生きている私たちの決意を、海に眠っている人に見てもらうため、メッセージを大きく大きく書く。そのための壁を作ろうと考えました。僕が本職とする左官の技術を使えば、巨大な一枚の紙のように壁を作ることができます。材料は塩害で枯れてしまった木や雄勝の土で、屋根の茅葺きは北上川ヨシ原のヨシも使っている。すべて自然に返る素材を使い、それに漆喰を塗り、白い壁にしました」

 こう語るのは、『雄勝・希望のキャンバス』と名付けられたこの壁を製作した左官職人で芸術作品も作る挾土秀平さん。今年8月に訪れたこの地で海の美しさに打たれ、〝海と壁が対峙する最高の場所〟と考えて、企画を立ち上げ地元住民の協力も得て制作に入った。

 そして挾土さんが誰よりも力を借りたいと思った人がいる。それが『スラムダンク』『バガボンド』などで知られる国民的人気の漫画家・井上雄彦さんだ。