第15回 ロックフェラー(その三)
恐慌は大チャンス。吸収と合併で稼いだ巨額の財産は何に費やされたか

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 一八七三年九月十八日―暗黒の木曜日---、南北戦争後の長い好景気の命脈がついに尽きた。

 中西部の大銀行、ジェイ・クック&カンパニーがノーザン・パシフィック鉄道への融資を回収できず倒産したのである。

 株式取引所は閉鎖し、銀行も鉄道会社も将棋倒しのように破綻していった。

 不況は六年間続いた。日当は二十パーセントから三十パーセントも下落したという。

 もっとも打撃を受けたのは、石油業界だった。ブラック・サーズデイの直後、原油価格は一バレル八十セントまで下がり、翌年には四十八セント―地域によっては、水を運ぶコストより安い価格―まで下がった。

 ロックフェラーは、この恐慌は、とてつもないチャンスだと考えた。

 当時、石油業界は供給過剰に喘いでいた。業界の二十五パーセントのシェアを確保していたスタンダード石油でさえ、六つの中核製油所のなかで稼働しているのは二つしかなかったのである。それでも、ロックフェラーの設立したスタンダード石油は利益を確保しており、資金はふんだんだった。彼は―隠密裏に―全国的な規模での統合を目指してライバルを吸収し、合併していった。

 ロックフェラーの秘密主義は徹底している。

 吸収した相手に看板を掛け替えさせず、書類や便箋なども、旧来の様式のままにし、人事もなるべく凍結して、その製油所が、すでにロックフェラーの傘下にある事を、感知されまいと努めたのである。