サッカー
二宮寿朗「YAJINがスタジアムの歴史を変える」

 2012年12月9日、鳥取・米子に多くのJリーガーが集っていた。田中マルクス闘莉王、大久保嘉人、三都主アレサンドロ……。完成したばかりの「チュウブYAJINスタジアム」の完成記念試合に参加するためだった。輪の中心にいたのは、J2ガイナーレ鳥取の精神的支柱、“野人”こと岡野雅行である。

“YAJIN”が建設資金集めに貢献

「チュウブYAJINスタジアム」が完成した経緯について簡単に触れておこう。
 ガイナーレの前身、SC鳥取はもともと米子市に拠点を置いていたが、Jリーグに加盟申請する際、J基準に合ったスタジアムがなかったために鳥取市の「とりぎんバードスタジアム」をホームスタジアムにしたいきさつがある。

 それでクラブに愛着のある米子市民が中心となってスタジアム建設の声が上がり、2010年に株式会社SC鳥取が1人1万円を目標として3億円の協賛金を集めることに。そのPR活動の中心となったのが人気の高い岡野であり、市民と企業からの協賛金が着工に必要な額に達したことから、建設計画が実施されたのだ。

 ただ、低予算で建設されたこともあって、J2の試合が開催できるスタジアム基準には至っていない。トップチームの公式戦で使用されるかどうかは現時点で何とも言えないが、ここがユースなど育成組織の拠点となることは間違いない。小、中、高校のサッカー部の大会や市民交流の場としても使用される予定で、「チュウブYAJINスタジアム」はクラブと米子市民が一体となる象徴とも言える。全県をホームタウンに置くガイナーレにとっては、新たな一歩を刻みこむことになった。

 それにしても「YAJIN」と現役選手のニックネームが入ること自体が新鮮だ。40歳の岡野はピッチ上でかつてのような輝きを見せることは難しくなってきたものの、ファン、サポーターの支持は絶大なのだろう。協賛金を募る上では岡野の知名度が大いに貢献したようだ。ネーミングライツで芝生の生産、管理請負などを事業の中心に置く「チュウブ」の企業名こそ入っているが、加えて「YAJIN」の名を刻んでいるこだわりがファンとクラブの距離の近さを表しているようにも思える。