作家・池井戸潤氏も絶賛
限界を超えて「うるさら7」を生んだダイキン工業 強さの秘密【後編】

取材・文/片瀬京子

【前編】はこちらをご覧ください


 挫折しそうな状況の中、リーダーの言葉が皆を奮い立たせた。仲間たちの不屈の闘志と互いの信頼関係によって、困難な目標が次々とクリアされていく。そして、ついに世界最高レベルの製品の完成へ---。日本が誇る「製造業の底力」を描くノンフィクションである。

皆が泣いた総決起集会

 大きな目標を掲げて2010年3月に正式にスタートした新製品「うるさら7」の開発プロジェクトは、その目標値の大きさの前に、早くも足踏みを始めようとしていた。

 それを打破したのは、滋賀製作所所長の岡田慎也(空調生産本部副本部長、常務執行役員)だった。

マイクを手にする岡田慎也所長

 2010年6月、「うるさら7」開発へ向けての総決起集会が開催されることになった。異例の事態を迎え、会場となった会議室には、「うるさら7」に直接関わっていない社員も多く詰めかけた。マイクの前に岡田が立つ。話は滋賀製作所の歴史から始まった。

 「滋賀製作所は40年前からルームエアコンを開発し、そして製造してきた。私自身、この滋賀に育ててもらったことに感謝している。一方で、ものづくりの現場が海外にシフトしつつある。ダイキンも例外ではない」

 一部製品の製造が中国の格力電器にシフトしたことで、滋賀製作所産のルームエアコンが減っていることは、この場にいる誰もが実感している。

 「しかし、滋賀製作所のものづくりの原点である『うるるとさらら』は、何としても我々の手で、ここで作らなくてはならない。そうして、日本のものづくりの発信拠点として、滋賀製作所の強さを示していかなくてはならない」

 初代「うるるとさらら」の開発プロジェクトリーダーだった岡田は力強く言い切った。その目には涙が光っている。

 「『うるさら7』の実現には、乗り越えなくてはならない壁がいくつもある。しかし、方向性は絶対に間違っていない。やり遂げよう。勝ちに行こう。そのために、この滋賀の全部門に協力を要請する」

 岡田は涙ながらに語りかけた。聞いている側も「もらい泣きなんてものではすまなかった」と小泉淳(空調生産本部小型RA商品グループリーダー 主任技師)は言う。あちこちから嗚咽の声が聞こえた。

 これを機に、「うるさら7」開発の必要性が改めて全所員に共有化された。

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