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東大教授が匿名で明かすホンネ
ピンは変わらない、キリは劣化

「東大までの人」と「東大からの人」第2弾 vol.3

「東大までの人」と「東大からの人」第2弾 vol.2 はこちらをご覧ください。

 ジャーナリストの立花隆氏は、'01年に刊行された『東大生はバカになったか』の中で、
「ついに東大でも高校の補習が始まった」
「理系の学生がニュートン力学や生物を勉強していない」
「地球1周の長さなど、簡単な質問が答えられない」
  などと、衝撃的な東大生の学力低下の例を紹介し、「なるほど東大生はバカになった」と論じて大きな反響を呼んだ。

 それに対して、当時26歳だった元東大生の谷田和一郎氏は、著作『立花隆先生、かなりヘンですよ―「教養のない東大生」からの挑戦状』の中で、「指導要領が変わったり、簡単な質問に答えられなかったからといって、東大生がバカになったと論理的には言えない」と反論し、特に理系出身者の支持を得て話題となった。

ほんとにバカになった?

 東大生は実際、バカになったのか。日々東大生と向き合っている教授たちは、彼らのことをどう見ているのだろうか。

「たしかにかつての東大には、"天才"と呼べるような学生が全国から集まっていましたが、今は昔と比べてレベルが落ちたように感じます。やはり、塾や中高一貫校などの受験システムが確立されて、そのお蔭で合格できる学生が増えたことが影響しているのでしょう。それは、こうしたシステムが整っている首都圏に合格者が圧倒的に多いことからも明らかです」

 そう話すのは、東大工学部名誉教授・松島克守氏だ。

「もちろん、50年ほど変わらず毎年約3000人の学生が全国から選ばれているわけですから、他大学に比べれば皆優秀で、ピンキリの、ピンの学生の優秀さは今も変わりません。
  IQは高くて知的腕力もあり、まるで日本刀のような切れ味をもつ学生が50人に1人は必ずいます。こうした学生は、何をやらせても圧倒的にスピードが早い。たとえば修士論文にしても、集中力と頭の回転がケタ外れですから、普通の人の半分の時間、数ヵ月であっという間に仕上げてしまう。
  それ以外には、切れ味でたとえるとよく切れるが折れやすいカミソリ、鋭さはないが朴訥で堅実な木刀などの層がいるわけですが、おしなべて大人しく周りに合わせていく小粒な学生が増え、昔の東大生にいたような、優秀でさらに野心もある、迫力のあるタイプが減ったように感じます」

 ほかにはどんな劣化が見られるのだろうか。法学部のある教授が指摘する。

「授業についていけなくなる学生がいるにしても、昔なら文学だとか芸術だとか、他の方向を見いだして打ち込んだものです。ところが今では、出会い系やパチンコなどにハマって理性が飛んでしまい、学校に来れなくなる学生がいる。なんのために最高学府に入ったのか、昔なら考えられないことですね」

 文学部や理学部の先生たちも、こう言う。

「高校で習ったはずの微分方程式や三角関数、指数関数などの特殊関数ができなかったりして、これでは一橋とか普通の文系大学と同じじゃないか、なんのための総合大学なのかと悲しくなります」(文学部教授)

「みんな大人しくて質問もしないし、意見も言わないし、学生同士で議論もしない。研究とは独立して知の闘いの世界で生き抜いていくこと。これでこの先、生きていけるのか心配してしまいます」(理学部教授)