佐藤優 インテリジェンス・レポート/読書ノート
「パレスチナ問題をめぐる日米同盟の亀裂」

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.003より
【はじめに】
今回は、12月16日の衆議院議員選挙(総選挙)後、日本が直面する焦眉の外交問題で、かつ日本の政治エリートが過小評価している問題について掘り下げた。インテリジェンス・レポートでは、イスラエル・パレスチナ関係について、読書ノートでは慰安婦問題を取り上げた。この2つの問題のハンドリングが自民党、「日本維新の会」にとっての超難題であるのだが、当事者はそのことに気づいていないようだ。民主党は選挙で頭がいっぱいで外交について考える余裕すらない。実に情けなく、かつ危険な状態が続いている。

【目次】
―第1部― インテリジェンス・レポート
 ■分析メモ(No.6)「パレスチナ問題をめぐる日米同盟の亀裂」
―第2部― 読書ノート
 ■読書ノート(No.5)「私たちはどのような日韓関係を残したいのか『普遍的人権』問題としての慰安婦制度」
 ■読書ノート(No.6)『三重スパイ CIAを震撼させたアルカイダの「モグラ」』
―第3部― 質疑応答

分析メモ(No.6)「パレスチナ問題をめぐる日米同盟の亀裂」

【事実関係】
11月29日(日本時間30日)、国連総会は、パレスチナが持つ国連の参加資格を「オブザーバー機構」から「オブザーバー国家」に格上げする決議案を賛成138、反対9、棄権41で採択した。日本は中国、フランス、ロシアなどとともに賛成票を投じた。イスラエル、米国、カナダなどが反対に回り、ドイツ、英国、韓国などが棄権した。

【コメント】
1.―(1)
日本の政治エリート、マスメディア関係者、一般国民の中東情勢に関する関心が低い。こういう状況においては、外務省が国際情勢を総合的に判断し、わが国益に適う判断をしなくてはならないが、それができていない。

イスラエル・パレスチナ関係によって中東情勢は大きく変化する。中東情勢の緊張は石油価格に直接影響を与える。また、米国のユダヤ・ロビー、親イスラエル的姿勢が顕著なキリスト教保守派は、経済合理性とは別の思想的、宗教的観点からイスラエルを支持する。

これらの勢力が米国政治に与える影響も無視できない。また、ユダヤ・ロビーが無視できない影響を与える国際金融市場、商品取引市場にとってもイスラエル・パレスチナ関係は、重要な変数だ。抽象的に中東情勢やユダヤ・ロビーの影響がビジネスに影響を与えるということが言われるが、具体的情勢分析に触れることは日本ではほとんどない。それゆえに日本のビジネスパーソンの「国際情勢勘」に深刻な欠損が生じている。

1.―(2)
日本の国益が日米同盟にあるとするならば、本件に関しては、反対の立場を表明すべきであった。最低限でもドイツ、英国ように棄権すべきであった。外務省のアラビスト(アラビア語を研修し、中東外交に従事することが多い語学閥)の一部に、日本はパレスチナやイランに対し、米国と一線を画した「独自外交」が可能であるという幻想を持つ人々がいる。この人々は、2001年の9・11後のテロとの戦いに日本は西側の一員として積極的に参加し、その後、2003年のイラク戦争の多国籍軍に自衛隊を派遣した後、「独自外交」の幅は著しく狭められている現実を理解しようとしない。

1.―(3)
日米同盟の深化とは、対中東外交においても米国との連携を強化するという意味である。今回のパレスチナの「オブザーバー国家」化をめぐっては、日米同盟の深化とは明らかに異なるベクトルが外務省内で働いている。

2.―(1)
元キャリア外交官で、外務省中東一課長、日米安全保障課長を歴任し
たアラビストとして評価の高い宮家邦彦氏(キャノングローバル戦略研究所研
究主幹)が・・・・・・(以下略)

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