韓国に売った日本人「実行犯」の告白「技術流出-新日鉄の場合」

2012年12月11日(火) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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「ポスコは複数の新日鉄OBを介して、いくつかのルートから最先端技術を入手しています。もとより私の頭の中にある知識や、体に染み込んだノウハウは私のものです。それを正当な手段でポスコに提供しただけです。

 新日鉄を退社した後、私の持つノウハウは同業他社との公平なコンペを経て、ポスコが鋼板の技術として正式に採用しました。

 このビジネスで、オペレート指導も含めてポスコから数億円を得ました。設計士に設計料を支払ったり、何年間にもわたって毎月のようにポスコに出向いて現地指導を行ったりしています。そう考えると、この報酬は法外な金額ではありませんし、また提供した技術はすでに特許が切れているものです。新日鉄がそのノウハウもすべて自社のものだと主張していることに正直、不満を感じます。

 そもそも電磁鋼板とは、発電所の変圧器などに使われる特殊な鋼板で、新日鉄が約3割と世界一のシェアを握っています。新日鉄が製造技術をライセンス供与した企業のシェアは4割に上り、この鋼板に関して新日鉄は圧倒的な優位を維持してきた。ポスコなどの中韓のメーカーにとって垂涎の的だったのです」

同情の余地はあるのか

 田中氏、大蔵氏は新日鉄の関連会社・日新製鋼に出向になり、同社の研究所にポストを得た。

 大蔵氏は'73年に優れた技術開発に対して贈られる「大河内賞」にも輝いた国内でも有数の技術者だ。こういうきわめて優秀な技術者でさえ新日鉄は社内で厚遇することなく、出向させていたという。

「新日鉄が技術者に報いることは少なかった。電磁鋼板の技術を集中的に開発していた'70年代から'80年代にかけて、技術者が発明した特許には1件につき、わずか1000円から1500円程度の手当が支払われただけでした。

 たとえば、鉄鋼生産でトン当たり2万円のコストダウンができる設備方式を開発したとしましょう。月に1万tの粗鋼を生産したら、2億円のコストダウンになる。しかし、これだけの功績を残しても、会社からもらう給料は何の発明もしていない社員と同じなのです。

 ある技術者はあまりに悔しくて、特許訴訟で有名な弁護士に相談したそうです。ただ、そのときには出願から20年が経過し、特許は切れて時効になっていました。弁護士からは惜しかった、と言われたそうです」

 実行犯の一人とされた田中氏は新日鉄を退社後、鉄鋼業に関する技術指導などを行う会社を自ら設立した。まもなくここに大蔵氏が合流し、ポスコをはじめ海外の鉄鋼メーカーを相手に営業を展開するようになった。

 同社は当初、鉄鋼に塗るコーティング薬を開発してポスコに販売するビジネスを行っていた。このビジネスは新日鉄の事業とはバッティングしないが、それでも新日鉄からクレームをつけられたという。

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