賢者の知恵
2012年12月11日(火) 週刊現代

投票に行く前に、これを読んでみてください「独立国家」を作った坂口恭平という男

週刊現代
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 国って何?政府って何?本当にお金がないと人は生きていけないの?疑問を抱いた男はついに、熊本で「新政府」を樹立した。目から鱗の国家論を聞いてみよう

文/丸本忠之

合法的に家を持っている路上生活者

 民主党政権が終焉を迎える。一方で、日本政府に見切りをつけ、熊本にひとりで新しく「国家」を建国し、その領土を拡大している男がいる。「条件は満たしているから国連に申請すれば加盟もできる可能性もある」と語る男の名は、坂口恭平。34歳、肩書は一応、建築家だ。

 建国のきっかけは原発事故だった。危険があるのに正確な情報を伝えず、国民を守らない政府を見て、これは政府ではないと思った。だから自分で国と政府をつくった。「生存権の死守」に特化した国を。

 彼の国は、我々のイメージする国家とは少し違うかもしれない。だが、条約上はれっきとした国家だし、現実に人を救っている。現政権では生きていけないかもしれない人々に、避難場所を用意しているのだ。

 坂口の国のモットーのひとつは、「土地」「住宅」からの解放だ。ローンを組んで家を買い、大きな借金を返すために奴隷のように働く、という生き方に坂口はずっと違和感を覚えていた。

「みんな『お金がないと生きていけない』と言う。住むのにも、食べるのにも、火や水を使うのにもお金がかかると。だけど、本当にそうなのか?誰も試したことないでしょ。だったら僕がやってやろうと」

 早稲田大学の建築学科に在学中、路上生活者を調査した。路上生活者のなかには、「ホームレス」でなく、合法的に家を持っている人がいた。調べてみると、係争の結果誰も所有していない土地、というのが都内にも、あの銀座にさえ存在することがわかった。その路上生活者はたまたまそういう土地を見つけ、ダンボールハウスを作って住んでいたのだ。

 だが、何より目から鱗が落ちたのは、彼らにとってダンボールハウスが「寝室」にすぎないという事実だった。図書館は本棚、スーパーは冷蔵庫、公園は水場・・・・・・都市空間のすべてを「自分の家」ととらえる発想の転換があった。

 そこからヒントを得て、坂口が生み出したのがモバイルハウス。ベニヤ板で作った三畳間だけの小さな家だ。

「いくつかデザインしました。屋根が透明のタイプなんか、冬でも日が差し込んでポカポカですよ。夏は暑くて住めたもんじゃないけど(笑)。でも、夏は外に出るんです。そこだけが家だと思うから息苦しい。家と意識する空間をどこまで広げていけるかの問題」

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