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 '01年1月6日、筋弛緩剤事件で守大助氏(41歳)が逮捕されたとき、彼の父親の勝男さん(67歳)は宮城県警高速道路交通警察隊の現職警部補だった。

 勝男さんは直ちに1ヵ月の病気休暇をとり、息子の〝救出〟に奔走した。仙台で最も冤罪に強いと言われる阿部泰雄弁護士に弁護を依頼。北陵クリニックの関係者を訪ね歩いて事情を聞き、捜査の実質責任者・T警部に「証拠があるなら示してほしい」と迫った。

 警部は「今は無理だが、裁判で」と口を濁し、捜査に対する自信のなさを裏付けるように「弁護人を解任してくれ」と何度も言った。

 勝男さんが突っぱねると「警察からもらった給料で弁護士費用を払うのはおかしい」と言い出した。

 勝男さんが「そんなら女房と離婚して慰謝料を払う。そこから女房が弁護士費用を出す」と答えると、それ以上何も言わなくなった。

勝男さんは長年、交通事故の捜査をしてきた。刑事であれ交通であれ、捜査は証拠に基づいて行われるべきものと信じてきた。ところが、息子の事件にはあるべき証拠がなかった。

「父親が息子の無実を信じるのは当たり前です。だけど、そんな親子の情を抜きにして一人の捜査官として、証拠もなしにこんなデタラメな捜査をやっていいのか、許せないという気持ちになった」と勝男さんが当時を振り返る。

 県警捜査一課は逮捕に踏み切るまでの約1ヵ月間、医学的な裏付け捜査を何もしなかった。

 点滴直後に容体が急変した小学6年生の女児らの病状について、搬送先の仙台市立病院の医師らから事情も聴いていない。原因究明に不可欠な小6女児らのカルテを市立病院から受けとったのも、大助氏逮捕から10日後のことだ。

 クリニックで容体が急変した高齢患者についても同じことが言える。本来なら主治医の院長や内科医からの聴取が不可欠だが、一切行っていない。ハナから原因を筋弛緩剤と決めつけ、他の病変や医療事故、薬の副作用などの可能性を排除してしまったのである。

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