内向きの議論にポピュリズムがチラつく総選挙---世界の中の日本という視点を忘れないことが日本再浮上の条件である!
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 総選挙は、事実上始まっており、毎日のように政党間の討論番組に駆り出され、あまりの多忙に閉口している。政党の離合集散も激しく、政党数が14になったり、12になったり、めまぐるしく変わっている。討論のテーマ、即ち選挙の争点も、景気、消費税、社会保障、原発、TPP、外交防衛と多岐にわたっている。しかし、議論が国内問題に終始し、世界の中の日本という視点が欠落しているように思えてならない。

 アジアを見ても、お隣の韓国も大統領選挙の真っ直中であるし、中国では習近平体制が発足したばかりである。また、北朝鮮がミサイル発射実験をしようとしているとの観測もある。日本の総選挙の行方は、アジアの国々、そして世界中が注視している。しかし、当の日本人には、そのような認識はほとんどなく、井の中の蛙といった風情である。あたかも、日本が自給自足で自己完結しているかのような錯覚を懐いてしまっているかのようである。

 これも、3年余に及ぶ民主党政権の失政が背景にあることは言を俟たない。日米関係に大きな亀裂を生むような外交政策を展開し、漁船を使った中国の領海侵犯行為に対しては、筋の通らない妥協をしてきた。しかも、国際社会のルール作りの場に、日本が積極的に参加してきた形跡はない。内政も大事であるが、外交に失敗すると国が滅ぶ。有権者は、民主党の責任を厳しく問うであろう。

世界中からお金を稼いでくるという発想が必要

 TPPにしても、海外に雄飛する、世界のルールを自らが決めるといった攻めの姿勢がない。農業をはじめ、保護すべき産業分野やシステムが存在すべきことは認めるにしても、輸出産業として攻めていく姿勢が皆無であるのは寂しいかぎりである。

 米や果樹など、おいしい日本の農産物は高価格でも、世界の市場において競争可能である。世界中からお金を稼いでくるという発想がなければ、日本は縮んでいかざるをえないであろう。

 TPPが様々な問題点を含んでいるのがよくわかるが、交渉に否定的な態度をとり続ければ、世界のルール作りに日本が取り残されてしまう危険性がある。貿易立国の日本は、FTA,EPA,TPPなどを活用して富を増やしていく必要がある。

 たとえば、日本の農家が、ベトナムに水田を作って三期作でおいしい米を大量に生産したらどうであろうか。そのような夢が、世界第五の農業大国である日本にはふさわしいのではあるまいか。若者が夢を持つことができるような日本にしていかなければならない。農業も、世界を相手に大きく飛躍する時期が来ているのではあるまいか。

 原発にしても、脱原発依存社会を目指すという点については、多くの国民が賛成であろう。しかし、再生可能エネルギーの開発をどうするのか、それが原発を完全に代替できるようになるのは、何年先のことなのか。その答えは、供給側のみならず、需要側の電力節約能力にも大きく左右される。

 そもそも、日本が今日のような原発大国になったのは、1973年の石油ショックが大きく関連している。中東からの原油に過度に依存していては危険だということで、原子力発電を推進してきたのである。

 現在の中東情勢も、シリア、パレスチナなどをめぐって紛争が絶えない。イランの核開発も大きなリスク要因である。今後、再び石油危機が生じることも、考えておかなければならない。そのときに、原発なしに日本に必要なエネルギー供給ができるのか否か、危機管理の視点も忘れてはなるまい。

 さらには、核不拡散との関連で核燃料サイクルへの取り組みを今後どうするのか。世界の発展途上国では、むしろ原発の建設が拡大している。そのような数多くの論点について、十分に議論し、国民的合意を形成していく努力なしに、脱原発、卒原発、原発ゼロと呪文を唱えても建設的な答えは出ないであろう。

 原発という争点についても、選挙に勝つためのポピュリズムがチラついて見えて、暗い気持ちになってしまう。反原発をスローガンにして、女性の感性に訴えるといった選挙戦略と同様な手は、これまでも何度も見てきたのではないか。

 世界の中の日本という視点を忘れないことこそ、ポピュリズムと戦う原点である。今回の選挙でもまた、有権者がポピュリズムに流されて投票することが繰り返されるようであれば、この国が再浮上することは難しいような気がする。

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