最悪を想定し、準備をしてからポジティブになれ!危機に対して思考停止になる日本人から脱却せよ

2012年12月03日(月) 田村 耕太郎

政治は監視しようでも過度な期待はやめよう

 総選挙が始まる。「メニュー」が増え過ぎて選ぶのに困るかもしれないが、選挙期間の各党各候補の発言をしっかり監視し、そのうえで選挙にはぜひとも参画しよう。乱戦模様の今回の選挙の一票はいつもより重いかもしれない。しかし、誰がリーダーになろうが、過剰な期待はすべきではないと思う。政治や政府に依存する姿勢から脱却しなくてはならない。今回はこれからの時代に必要な準備について書きたい。

「準備のないポジティブ思考は意味がない。」これはランド研究所の危機管理の専門家から学んだ言葉だ。別の言い方で彼は「Plan for the worst,. Hope for the best」と“危機管理の要諦"を説明してくれた。「最悪を想定して計画を建てよ。そしてその後は最善を期待しながらその計画を実行せよ」ということだ。

 何の準備もなくポジティブなるのは単なる蛮勇か思考停止に過ぎない。まもなく太平洋戦争の開戦の日を迎えるが、最悪の事態を予想をすることを嫌い、最善に基づいて計画された大本営の戦争準備や数々の戦闘計画は、残念な代表例だと思う。

死者の半数が餓死だった太平洋戦争

 太平洋戦争の戦死者約230万人のほぼ半分が餓死だったと言うことは意外と知られていない。太平洋戦争の失敗は甘い想定から来る補給を無視した人海戦術にあった。つまり、最悪を想定することを怠ったのである。

 その典型例はインパール作戦だ。戦争末期、帝国陸軍が敗色濃厚だった戦局を一気に打開すべくインド北東部の都市インパールに攻略をめざした、最善だけを想定し多数の犠牲者を出した残念な作戦がこれだ。

 牟田口廉也中将が補給不足打開と称して考案したのが“ジンギスカン作戦"。水牛、ヤギ、ヒツジ等に荷物を積んで行軍させ、途中で必要に応じて食糧に転用するという作戦だ。もともとそれらの動物は長時間の行軍に慣れておらず、ジャングルや急峻な地形で、兵士が食べる前に、早々と脱落していった。家畜の半数が川を渡れず溺死したという。さらに三万頭の家畜を引き連れた日本軍は空からの格好の標的となった。こんな例はまだまだある。




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田村 耕太郎

(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学上席研究員、ハーバード大学研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。
国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社取締役東京支社長。
1963年生まれ。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了、東京大学EMP修了。
2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。
シンガポールの国父リー・クアンユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。
2014年8月、シンガポールにアジアの地政学リスクを分析するシンクタンク「日本戦略情報機構(JII)」を設立。また、国立シンガポール大学(NUS)リー・クワンユー公共政策大学院の兼任教授に就任し、日本の政府関係者やビジネスリーダーに向けたアジア地政学研修を同校教授陣とともに実施する。
著書に『君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から』などがある。