上海は市場として見れば魅力的だが、会社を維持し、生活する場所として考えると高コストな街だ。家賃も人件費も高い。外資系企業への優遇策もほとんどない。生活費もばかにならず、お金は出ていくばかり。

だったら、会社は地方において、クライアント回りなど必要な時だけ上海に出てくればいいじゃないか。
そう発想を変える起業家が見られるようになってきた。安徽省馬鞍山にIT関連会社を興した中尾貴光さんもその一人だ。
中尾さんは当初駐在員として上海にやってきたが、中国に来たからには起業しようと思っていた。退職を決めた頃、中国人の友人からアドバイスを受けた。
「どうせ起業するなら、地方政府と組んでやったほうがいい」
中国のITの開発拠点は現在、内陸部に移っている。地方政府が外資の誘致に積極的に動いている。友人の紹介でいくつかの地方都市の政府を訪問した。事業内容に文句をつけたり、居丈高な姿勢が目立つ都市もあった。

「外資の誘致に積極的で、IT企業への支援体制が整っていたのが馬鞍山でした。馬鞍山は鉄鋼の街です。役人たちは孫の世代のために新しいビジネスを育成しようとしていまして、その一つがITだったのです。
優遇条件も良かったですし、人件費やランニングコストが上海よりずっと安い。街と一緒に成長していけるというのにも惹かれました」
優遇条件のひとつは、オフィスの3年間無料貸与だった。広さは約150平米。ちなみに、上海駐在員時代のオフィス家賃は1万元を超えていた。優秀な人材を募集したいと言えば、地元大学の学長とすぐに会え、便宜をはかってくれる。
異業種の中国人経営者は頼まずとも、というか、イヤというほど紹介される。住まい探しのほか、娘の幼稚園探しにまで手を貸してくれた。
「上海では3LDK、120平米のマンションを8500元(1元=約13円)で借りていました。今は同じくらいの広さで、家賃は7分の1の1200元です。IT系人材の大学新卒者は上海なら初任給は4000元が相場ですが、ここでは1500元です。
うちでは優秀な人材が欲しいので2000~3000元出していますが、人件費は上海で起業するよりも3分の2以下に抑えられると思います」
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