第13回 ロックフェラー(その一)
「石油王」の誕生---
鉄道と電信を生かす事務作業が、若かりし彼を鍛えた

 石油をめぐる世界規模の興亡を記述した浩瀚な書物『石油の世紀』を著した、石油問題の世界的権威であるダニエル・ヤーギンは、日本語版前書に、かく記している。

ところで、石油は日本にとって特別に重要な意味を持っている。二〇世紀の初頭、ロイヤル・ダッチ・シェルの創業者、マーカス・サムエルは、日本が世界の強国として台頭するにあたり金融面の支援をした。

 後、一九三〇年代から四〇年代にかけて、石油の逼迫は、日本をして大東亜共栄圏の建設に向かわせることになった。東インド諸島の石油を求めて南進する要因となったのだ。そして、太平洋戦争の破局を迎える。戦後、再び石油は、日本の〝高度成長〟の原動力となった。

・・・・・・(中略)

 石油は日本にとって依然として〝選択〟を迫られる燃料であり、〝必要〟不可欠な燃料なのである。世界の先進工業国の中で、日本はイタリアに次ぎエネルギーの石油依存度が二番目である。全エネルギー消費量の中で石油の占める割合は、アメリカが四二%、全世界で三九%であるのに比べ、日本のそれは、五七%なのだ」(日高義樹、持田直武訳)

 平成二十一年度の統計では、依存度は四十五パーセントにまで低下している。とはいえ、大震災後、原子力発電の稼働率が低下している状況を考えれば、予断は許さない。石油の供給を断たれたために、無謀と知りながら戦争に突入した歴史を考えると、けして楽観はできないだろう。

 石油を巡る叙事詩の幕開きは、一人の狂言回しの登場からはじまる。

 その名は、エドウィン・L・ドレーク。

 本人は、『大佐』と名乗っていたが、実際に彼の軍歴を確かめたものはいない。

 ドレークは、ニューヘブンの銀行家ジェームズ・タウンゼンドを説得し、石油の存在が確認されていた、タイタスビル(ペンシルバニア州)で掘削を行った。間延びした失敗の繰り返しの後、一八五九年八月二十七日の土曜朝、油井やぐらから「ロックオイル」が吹き出しているのを、作業員がみつけた。石油が出たら、あとはポンプを設置するだけだった。