「分厚い中間層」「一億総中流」の復活はもはや幻想。次の政権には"三角形"の階層分布を前提にした教育改革を期待したい---冨山和彦・経営共創基盤代表取締役に訊く

 安倍晋三総裁率いる自民党が「政権公約(マニフェスト)」を発表するなど、総選挙に向けた動きが本格化してきた。経済のグローバル化が進む中で、日本はどこへ進もうとしているのか。総選挙を経て生まれる"次の政権"の役割を、企業再生の現場で活躍する冨山和彦・経営共創基盤代表取締役に訊いた。

聞き手: 磯山友幸(ジャーナリスト)

---今度の政権はどんな政権になるのが好ましいと思いますか?

冨山和彦氏 (写真/ 岐部淳一郎)

 安倍晋三さんは経済をあまり分かっていないのではないでしょうか。もっとも政治家に、経済情勢を皮膚感覚として分かる人はいません。麻生太郎さんですらそうです。みな学者から聞いた話のパッチワークか、経団連の主張の受け売りです。最近の政権について言えば、「成長戦略」を作成するという時点で経済をわかっていないのではと感じます。

 マクロ経済政策を唱える学者はおしなべて、政府のなし得る事や日銀のなし得ることを過大評価しがちです。経済政策なるものが実体経済に影響を与える事を前提としている学問ですから無理もないのですが。それは竹中平蔵さんでさえそうだと思います。

---安倍氏の周辺は、日銀が国債を買い入れるなど大胆な金融緩和を行えば経済が動き出すという主張をしていますね。

 ええ。でも、政策的介入によって経済を良くするという点について、政府がなし得ることは極めて限定的です。政治的なアリバイ作りのために政策を実行するのはともかく、余計な事をすると経済を壊してしまいます。そういう場合が殆どだと言っていいと思いますね。

---自民党は、これまで3年間、民主党がやってきた政策を方向転換すると言っています。

 民主党は、所得の再分配に関しては直接現金給付型を志向していて、経済政策に関してはやや計画経済、ターゲット戦略的な指向性が強かった。いずれにせよ政府がなし得ることを大きく見ていた、ということです。

 安倍自民党は「国土強靭化」という古い形で支持者の期待に応えるのか、あるいは新しい形で応えるか。どちらにも行く可能性があります。ですが、閉塞感の打開を政府に期待すると、結果的に閉塞は深まります。結局は、規制を緩和して、基本的に民間に任せる。それが答えだと感じます。