読書人の雑誌『本』
『僕たちの前途』 著:古市憲寿
不真面目に働いている僕の真面目な起業家研究

 去年の秋、『絶望の国の幸福な若者たち』という本を出した。

 主人公は現代日本の「幸せ」な若者たちだ。ユニクロやZARAといったファストファッションを身に纏い、スマートフォンを使って友人と連絡を取り合う。食事はマクドナルドなどのファストフードで安く済ませることができる。

 一人が寂しい時にはLINEで呼びかければすぐに仲間は集まる。誰かの家で鍋でもすれば、楽しいしお金もかからない。こんな風に現代の若者たちはお金をあまりかけずに、そこそこ楽しい生活を送ることができる。

 僕や編集者、出版社の予想に反して『絶望の国の幸福な若者たち』は意外と話題になった。「実は若者の幸福度や生活満足度が高い」というデータが衝撃的だったらしい。脱原発デモに熱心な社会学者の小熊英二には(悪い意味でも)「歴史に残る本」と言われた。

 最近では僕自身がメディアで「若者代表」として呼ばれる機会も増えた。しかし自分のことを「若者代表」と呼ばれるたびに、僕は少し不思議な気持ちになる。

 確かに後期高齢者の評論家よりは「若者」の気持ちはわかるだろうが、いわゆる若者文化に詳しいわけでは全くない。また僕自身の生活も、『絶望の国の幸福な若者たち』で描いた「若者」とはだいぶかけ離れたものだ。

 たとえば僕はマクドナルドにも吉野家にも滅多に行かない。ユニクロやZARAは着るけれど、デザイナーズブランドの3万円を超えるTシャツも買う。LINEをきちんと使うようになったのもつい最近。海外には頻繁に行くし、消費欲は旺盛。あんまり「若者」っぽくない。

 
◆ 内容紹介
上場はしない。 社員は三人から増やさない。 社員全員が同じマンションの別の部屋に住む。 お互いがそれぞれの家の鍵を持ち合っている。 誰かが死んだ時点で会社は解散する。 僕は今、そんな会社で働いている。 社長は「会社」というよりも「ファミリー」という言葉を好む。 社長と言っても今27歳である僕の一学年上なので、まだ29歳である。 顔は高校生のような童顔。 低めの身長に太めの胴体。 名前は―― (本書より)

「いい学校、いい会社、いい人生」というモデルから 「降りた」若き起業家たち。 自らもその一員である古市憲寿が、徹底的にそのリアルに迫る。