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プロが選んだ安全地帯 首都直下巨大地震ここにいればあなたは助かる 知っておくだけであなたとあなたの家族の生命を守ることができる
週刊現代 プロフィール

 首都・東京を覆い尽くす危険地帯。その恐怖についてたびたびお伝えしてきたが、ではいったいどこなら「助かる」のか。その素朴な疑問を専門家たちに尋ねると思いがけない答えが返ってきた---。

専門家は知っていた

 「東京が巨大地震に襲われた際に安全な場所?そんなところがあるだろうか」

 元土木学会会長で、液状化現象を研究している濱田政則早稲田大学理工学部教授は、こう首をひねった。

 これまで本誌は、首都圏の意外な危険地帯などをたびたびお伝えしてきたが、〈では安全な場所はどこなのか?〉という疑問が常につきまとっていた。だが専門家たちに問いをぶつけてみると、誰もが考え込み、深く嘆息する。濱田教授もこう言葉を継いだ。

 「想定されている首都直下地震のひとつ、東京湾北部地震が起これば、地表近くにかかる力は500~600ガル。東日本大震災では浦安などで激しい液状化現象が起こりましたが、あのときの力が100~150ガルです。首都直下の巨大地震が起これば、液状化する可能性が少しでもある土地は、ほぼすべて液状化して、浦安のようになると考えておいてよいでしょう」

 東日本大震災では千葉県浦安市の住宅街で、家屋や電柱が傾き、地面が沈下して下水管が浮き上がり、路面からタケノコのようにマンホールが突き出し、異様な光景が広がった。

 臨海部の埋め立て地や隅田川・荒川沿いの広大な低湿地が広がる首都・東京で安全な場所を探すのは容易ではないようだ。だが専門家がどんな場所を「安全」と考えるのかを知るだけでも、私たち自身や家族の命を救うヒントになる可能性はある。

 濱田教授が危険性を指摘する埋め立て地にも最近、次々と高層マンションが建てられているが、そうした場所はどうなのか。

 「建築の観点からは、基礎の杭を非常に深く打ち込んでいるから地震に強い。しかし現行法では、設計者は埋め立て地を囲む護岸のことまで考える必要はないのです。護岸は建築ではなく土木の範疇ですが、これが崩れて地盤が流出すれば建物を支持する土台がなくなってしまう」(濱田教授)

 こうした護岸は区や都の管理部分と工場などの私有財産が混在し、いっせいに点検・補強するのが難しい状況にあるという。

 「東京の埋め立て地を技術レベルで見ると、江戸時代~戦前の部分、戦後~昭和40年代、それ以降の3段階に大きく分けられます。

 日比谷公園や品川駅の東側といった江戸幕府や明治政府が行った埋め立ては、もとが浅い海だった場所で液状化の程度も小さい。

 一方、液状化現象が初めて認知された昭和39(1964)年の新潟地震以降、昭和40年代より後に計画された埋め立て地では、一応対策が考えられています。

 戦後~昭和40年代までの期間にできた埋め立て地がもっとも注意が必要で、深い海を、液状化を考慮せずに埋め立てた。川崎市の扇島などがこの年代に当たります」(同前)

 こう指摘する濱田教授が呻吟しながら教えてくれた安全地帯が、品川駅の北西にある高輪・泉岳寺だ。

 「東海道より東側は、明治以前は海でしたが、泉岳寺や周辺の寺社は海際の高台に位置していた。JRの線路と高台の間にある道路や土地はかつての砂浜で、砂丘になっている。砂丘は頂上付近だと地下水が少なく液状化しにくいのですが、縁辺部は逆にしやすいので注意が必要です」

 かつては海だった土地に大規模な街ができている品川。巨大地震が発生した瞬間、あなたがもし駅の東側にいれば、泉岳寺や品川プリンスホテルなど、かつての高台に身を寄せたほうがいいだろう。ただしビルの窓ガラスや寺院の屋根瓦などが落下してくる可能性があるので頭上に注意。山門など、古い木造建築は倒壊する恐れもあるため、これらを避けて、なるべくひらけた場所に避難したい。

 「東京都は近く、かなり詳細な地盤のボーリング調査の結果を公表すると言っています。自分が普段いる場所がどういう地盤なのか、どういう対策をとっていけばいいのか、まずはそこからチェックしてみてはどうでしょうか。液状化する土地に戸建ての自宅がある方でも、家が傾くのを防ぐ安価な方法を我々は開発しています。商品化はこれからですが、とにかく打てる手を真剣に探していくときなのです」(同前)

 東日本大震災後も次々と建設が進む超高層ビル。これらは南海トラフの地震など、遠方の震源から来るゆっくりとした揺れ(長周期地震動)の影響を受けやすいとされる。日本建築学会は内閣府の依頼で超高層ビルの長周期地震動対策を調査したが、そのチームリーダーを務めた北村春幸東京理科大学教授はこう話す。

 「超高層建築の設計では、'00年以前は観測波といって、過去に起こった地震の揺れの波形に対して強度が充分かという検討だけをしていました。これを'00年から告示波も考えるようになった。その土地で500年に1回程度起こるであろう揺れを人工地震を起こして調べたものです。

 さらに'03年の十勝沖地震から指摘されるようになった長周期地震動への対策は、'04年頃から検討され始めています」

 '04年以降に着工された高さ60m以上の超高層建築といえば、東京ミッドタウン、東京スカイツリー、渋谷ヒカリエなどがある。ヒカリエの8階には渋谷区の防災センターが置かれており、現時点で最高レベルの地震対策が施されていることがうかがえる。

 また直下型地震対策は'95年の阪神・淡路大震災以降に進んだが、六本木ヒルズ、渋谷のセルリアンタワーなどは、それらの教訓を取り入れている。

 「新しいビルでは金属製の脚で支えられたガラス張りの開放的な空間が多く見られます。ドット・ポイント・グレージング(DPG)といって、海外の著名な建築家が考案し商品化されたものですが、正しく施工されていれば安全なはずです。過剰に恐れる必要はありませんが地震時はガラス張りの吹き抜けより、天井があるビルの中心部エレベーターシャフト付近などにいるとよいでしょう」(同前)

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