雑誌
全国民必読 第1部 日本発 大恐慌の可能性パナソニック・ショックの内実
置いていかれたニッポン 世界の経済はルールが変わっていた!
〔PHOTO〕gettyimages

 新興国バブルやエコポイント制度によってもたらされた好業績は瞬く間に消えた。白日の下に晒された日本企業の裸の実力。世界経済のルールが変わったが、日本だけが、それに対応できずにいる。

経営判断を間違えたのは誰か

 日本を代表する名門・パナソニックに〝万が一〟のことがあれば、影響が及ぶのは32万人のグループ社員にとどまらない。下請けや取引先など関連会社は当然のこと、日本の証券市場全体、さらには金融機関にも強烈なインパクトを与えることになる。

「欧州はもちろん、中国、米国の株価も調整局面に入ったこの時期にパナソニックのような日本を代表する企業の株価が暴落すると、日本経済の底が抜けるおそれがあります。海外の製造業にも大きな影響を与え、日本発の恐慌の引き金を引く可能性さえある」(外資系証券会社アナリスト)

 11月初旬、そんな「悪夢」が現実になりかかった。

 10月31日にパナソニックは、昨期に引き続き7650億円という巨額の赤字になる見通しを発表した。2期連続で計1兆5000億円という額もさることながら、津賀一宏社長の口から「当社は負け組」という言葉が飛び出したことが、市場関係者、パナソニック社員にショックを与えた。

「残念ながら当社はこの領域(デジタル家電)で『負け組』になっているといわざるをえません。

 当社は20年ほど前から『低成長・低収益』という状態が続いてまいりました。これはまさに普通ではない状態であり、このことをしっかり自覚するところからスタートしなければならないと考えております」

 この会見の直前、大阪府門真市にあるパナソニック本社の多目的ホールには、幹部社員が集められていた。津賀社長は衛星放送(パナ・サット)を通じて、全国の幹部社員に巨額赤字と63年ぶりの無配転落を告げた。

 パナソニック中堅社員がこう話す。

「社長が『負け組』という言葉を使ったことに、現場はがっくりきています。『負け組』にしたのは、誰の責任なんだと。それは経営陣でしょう。社員に危機感を共有させようとしたのかもしれませんが、あれでは株価が下がって当然です」

 BNPパリバ証券投資調査本部長の中空麻奈氏もこう指摘する。

「負け組という言葉を使うなら『いまは負け組だが、今後はこの分野にシフトするので勝ち組になるはずだ』というべきでした。少なくとも、あの言葉を聞いた社員は自信とやる気をなくしたはずだし、市場もあれで落胆しました」

 決算発表の翌日、パナソニック株はストップ安まで暴落。市場は〝パナソニック・ショック〟に揺れた。

 11月2日には米スタンダード・アンド・プアーズがパナソニックの格付けを2段階引き下げ、トリプルBにすると発表。その後も株価は下げ止まらず、37年ぶりの400円割れとなった。

 時価総額は1兆円を割り、9600億円まで下落。中韓台の新興メーカーにまるごと呑み込まれる買収リスクさえ語られ始めた。

 それにもかかわらず、津賀社長があえて「負け組」という言葉を使った真意はどこにあるのか。

 '00年代前半まで好調だったパナソニックの業績に転機が訪れたのは、プラズマテレビに傾注したテレビ事業の不振と、三洋電機買収に伴う莫大な出費だ。

「要するに前任者である中村—大坪体制の経営判断が誤っていた。この二人がいわば元凶です」

 と言うのは、経済ジャーナリストの井上久男氏だ。

「世の中、デジタル化が進んで、複数の企業で分担して製造する仕組みになっているのに、パナソニックはすべて自社生産にこだわり、プラズマテレビに目いっぱい投資してしまった。その時点でプラズマと液晶では、液晶のほうが圧倒的にシェアを拡大し始めていたにもかかわらずです。尼崎にプラズマテレビの巨大な工場をつくったけれども、結局、工場は一部休止に追い込まれてしまった。

 パナソニックにとってテレビ事業は歴代社長を出してきた聖域で、それだけに抜本的なテコ入れはできなかった。膿が相当たまっていたわけです。津賀社長はババを引かされたという見方もできます」

 前会長・中村邦夫氏。長く「パナソニックのプリンス」と呼ばれ、'00年に社長就任。構造改革を推し進め、V時回復を成し遂げた名経営者と謳われた。

 '06年に大坪氏に社長を譲ったが、会長となったあとも権勢を振るい「天皇」とまで呼ばれた。松下・ナショナルという名前を捨て、パナソニックにブランド名を統一。三洋電機の合併、松下電工のTOBによる完全子会社化など、次々と重大な経営判断を下した。

 それらの判断の是非がいま問われているのである。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら