米大統領選の投票結果を完璧に予測! 新たに生まれたヒーロー、ネイト・シルバーとビッグデータ分析

 ネイト・シルバー(Nate Silver)氏(34歳)はニューヨーク在住の統計専門家であり、ニューヨークタイムズの人気ブログ「FiveThrityEight ~NateSilver's Political Calculus(538 ~ネイト・シルバーの政治的微分積分)」を執筆するブロガーです。11月6日以降、アメリカの主要メディアで彼の名前を見ない日がないほどの人気が続いています。なぜでしょうか?

大統領選でニューヨークタイムズのネイト・シルバーの数理モデル予測が全50州で的中―政治専門家はもはや不要?』 TechCrunch japan (11/8/2012)

 シルバー氏が運営するブログ「538(FiveThirtyEight)」とは、アメリカで大統領に当選するために必要とされる全米の選挙人の数を表しており、彼は独自の数理的分析手法を用いて、大統領選や上院選などで抜群の投票結果予測を行うことで知られています。

 前回(2008年)の大統領選挙でも、50州中49の州で選挙結果をほぼ完璧に予測した実績があり、2009年、当時31歳でタイム誌が選ぶ「世界で最も影響力がある100人」に選ばれたほどです。

 そして今回、シルバー氏の名前を決定的に有名にしたのは、先日行われたアメリカ大統領選挙において、全米50州における投票結果を完璧に予測したことです。

予測結果比較
勝利の確率

 シルバー氏の分析手法で特徴的なのは、選挙区の人種、宗教などの人口動態、世論調査など、様々なデータを過去にさかのぼって蓄積し、確率論を用いた選挙予測モデルを開発した点です。

 今回の選挙予測でも、シルバー氏は投票日が近づくにつれ、オバマ大統領が再選する確率を90%以上であると大胆に予測し、昔ながらの経験や政治情勢に基づいて分析をする「選挙分析専門家」から批判を浴びました。しかし、最後にはシルバー氏の分析の圧倒的な正しさが証明される結果になりました。

経験や勘よりもビッグデータ分析に基づく判断が求められる時代に

 昨年秋に封切られた、実話に基づく米映画『マネーボール』(原作:マイケル・ルイス/2003年)のエピソードも、今回のシルバー氏の活躍を讃える際に引き合いに出されることが多いので、簡単に紹介します。

『マネーボール』公式ウェブサイトより

 この映画では、ブラッド・ピット演じるオークランド・アスレチックスのジェネラル・マネージャー(GM)ビリー・ビーン氏が、データ分析を武器に新しい価値観で貧乏球団を立て直そうとする物語が描かれます。また、シルバー氏を彷彿させる役として、統計分析の専門家も重要な役割を果たしています。

 「経験や直感ではなく、データ分析に基づいた知見や意思決定は今後、ビジネス、政治などあらゆる分野で必要とされる」という台詞が映画の中でも訴えられていましたが、今回の選挙結果はこのメッセージがまさに現実となった瞬間といえます。

参照:『Big Data for Good ~データ・サイエンティストによるNPOへのプロボノ・プロジェクト、Data Without Boarders』(3/7/2012)

 ソーシャルメディアニュースサイト「マッシャブル」の記事でも、次回2016年の大統領選の際には、データ分析を得意とするシルバー氏のような専門家が数多く登場するだろうと指摘しています。また、すべてのニュース報道機関は、シルバー氏のようなデータ・ジャーナリズムを駆使できる人材を必要とするだろうとも指摘しています。

 ザ・ニュー・リパブリック誌での報道によると、大統領選前日に、ニュヨールタイムズのオンライン版の全訪問者のうち20%(選挙当日には27%)もの人が、シルバー氏のブログサイトを訪れたとのことです。

 ニューヨークタイムズのサイトは現在、全米で6番目に訪問者数の多いサイト(2012年9月時点で月間5億7300万ページビュー)であることを踏まえ、選挙直前で訪問者数が増えていることを加味すると、おそらく600万人もの人が、投票日前日の一日でシルバー氏のサイトを訪れただろうといわれています。

 シルバー氏が2012年9月末に出版したばかりの書籍"The Signal and the Noise: Why So Many Predictions Fail—but Some Don't" (シグナルとノイズ:なぜ多くの予測は外れ、いくつかは当たるのか※日本語未訳)』は、投票日の直後24時間で売上が850%も上昇し、アマゾンの売上ランキングも2位に急浮上するという現象が起きました。

 ネイト・シルバー氏という人物と彼が駆使するビッグデータ分析の手法、そしてこれからの可能性に、多くの人が注目しています。

 海外のメディアでの熱狂ぶりと比較すると、日本国内メディアでの、選挙予測におけるデータ活用に関する報道は、現在、まだそれほど多くない印象です。ただ、近く衆議院議員総選挙、東京都知事選挙の開催を控えている日本においても、こうした思考法や分析手法は間違いなく必要になっていくでしょう。シルバー氏の書籍もいずれ邦訳されるはずです。彼の今後にぜひ注目していきたいと思います。

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