佐藤優 インテリジェンス・レポート
「野田首相訪露延期の背景事情」

【目次】
―第1部― インテリジェンス・レポート  ■分析メモ(No.1)――「野田首相訪露延期の背景事情」
―第2部― 読書ノート
 ■読書ノート(No.1)『松丸本舗主義 奇蹟の本屋、3年間の挑戦』
 ■読書ノート(No.2)2012年11月4日付『朝日新聞グローブ』「シェールガス革命」
―第3部― 質疑応答

分析メモ(No.1) 「野田首相訪露延期の背景事情」

【重要ポイント】
◎11月26日に予定されている森喜朗元首相とプーチン大統領の会談が延期され、12月に予定されていた野田佳彦首相の訪露が1月に延期された主な原因はロシアの内政が緊張しているからである。

◎森訪露が実現すれば、LNG(液化天然ガス)、日露パイプライン敷設などのエネルギー協力の方向性が見えてくる。

◎森訪露を延期、野田首相の訪露を断念させることにより、次期首相になる可能性がある安倍晋三自民党総裁の歓心を買おうとする外務官僚の画策が、事態を一層複雑にしている。

【事実関係】
1.
11月5日、ロシア政府より日本政府に対して、「かねてより日本政府が打診していた森喜朗元首相の訪露に関して11月26日にプーチン露大統領が会見する」との回答があった。

【コメント】
1.
森喜朗元首相(自民党)は、ロシアのプーチン大統領と個人的にきわめて親しい関係にある。これは、単なる社交の関係にとどまらない。

限られた関係者しか知らないが、当初は東シベリアから中国の大連に敷設される予定だったロシアのガスパイプラインが、東シベリア-ウラジオストク間に変更になったのも、森氏からプーチン氏への個人的働きかけによるものである。

プーチン氏は森氏の目の前で地図を広げ、鉛筆で「こうすればいいですね」と線を引き直した。その結果、LNG(液化天然ガス)の日本への輸入の道筋が整った。

2.
今年3月にプーチン氏が大統領に返り咲いた後から、野田佳彦首相の親書を携行して森氏がモスクワを訪問し、プーチン大統領と会談することが水面下で検討されていた。

6月18日(日本時間19日)に行われた日露首脳会談で、野田首相が森氏の訪露について言及すると、プーチン大統領は「ヨシはいつくるのか」と強い関心を示した。

しかし、外務省はロス・カボス日露首脳会談で森訪露の話題が出たことを対外的に秘匿した(その後、7月5日付の朝日新聞朝刊と産経新聞が事実を明らかにした)。

3.―(1)
9月8日、ロシアのウラジオストクで行われた野田首相とプーチン大統領の会談で、本年12月をめどに、森氏の訪露を調整するという合意がなされた。しかし、その後、日程調整が進まなかった。対露関係の発展に積極的な野田首相、玄葉光一郎外相と、それを阻止しようとした一部外務官僚の「綱引き」が原因である。

モスクワの日本大使館員、東京の外務省員も「年内解散の可能性がある。野田政権はいつまでもつかわからない」という情報をロシア側に流したことも、ロシアの慎重論を強める要因になった。

5.
森氏の訪露に関し、外務省は関係者に「11月15日頃までは黙っていてください」と箝口令を敷いたが、当の外務官僚がリークした。しかも一部外務省幹部は、情報を客観的に流すのではなく、森訪露が失敗するような仕掛けをした。

6.―(1)
毎日新聞の記事に関連して複数の新聞記者から「河相周夫(かわい・ちかお)外務事務次官が森訪露を邪魔している」という情報が寄せられた。・・・・・・

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