「存在に値する」会社の必要条件は何か? それは過去を健全に否定し、世の中に新しい価値を送り出し続ける「起業家精神」だ!
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 本コラムでは2回連続でパナソニックやシャープの大赤字と経営責任の話を書いた。「もっと厳しく書け」「批判して書き過ぎだ」といった声が読者や知人から寄せられた。物書きである以上、自分が書いたことに様々な批評が加えられるのは当然であると思っているし、耳を傾けるものもあれば、無視するものもある。

 そうしてあれこれ考えるなかで、利益を出した会社が偉いのか、株価を上げた会社が偉いのか、経団連会長になる会社が偉いのか、といった具合に「会社はなぜ存続しているのか」という根源的な問題を考えてみた。ここでいう「偉い」の意味は、「存在に値する」といったイメージに近い。

 個人や公的年金の資産の運用対象となる上場企業の株価は我々の生活にも大きな影響を与える。その株価を支えているひとつの指標が企業の収益であることは間違いない。この2つは非常に目に見えやすい指標だから、筆者も含めて経済記者はみなその上がり下がりを見て企業経営を論じる。

 しかし、筆者は利益や株価だけでも企業を評価しない。その企業の姿勢や志も見る。たとえ赤字で株価が下がっていても、将来を見据えた準備段階にいるだけのケースもある。筆者流に言うと、偉い会社とは「新しい価値」を生み出している会社である。

 新しい価値とは、リスクに立ち向かい、これまでにないような経営手法を用いて新しい技術やサービスを生み出し、世の中を進化させるという意味合いが多分に込められている。新しい価値を生み出すから顧客が付き、利益も生まれる。要するに、「儲けは後から付いてくる」といった経営方針の会社を評価するようにしているのだが、多くの日本企業からはこうした志が消えているように思えてならないのである。

20年以上前に生まれた「ファブレス」企業

 メガチップス(本社・大阪市)という会社をご存じだろうか。半導体の会社である。社員280人。2012年3月期売上高は354億円、営業利益率は8.5%と高い。東証一部に上場する株価は2012年10月19日に年初来高値の1,905円を記録し、1,000円台後半を維持している。

 日本の半導体産業はエルピーダメモリの倒産に象徴されるように苦境に立たされているが、メガチップスの業績は好調だ。

 同社は1990年、日本で初の生産設備を持たない半導体メーカーとして誕生した。研究開発に特化した設計部隊中心の「シリコンバレー型」企業で、生産は台湾メーカーに委託するという、日本では珍しいビジネスモデルを20年以上も前に始めた会社だ。三菱電機やリコーで技術者だった進藤昌晶弘氏が50歳を直前にして裸一貫で創業した。現在では任天堂のゲーム機などにシステムLSIを納入している。

 メガチップスは他社がやらないことに挑戦して成功した企業だ。「ファブレス(製造部門を持たない)」という日本の半導体産業になかった概念を採り入れて、産業界に新しい価値をもたらした。かつて進藤氏はこう語っていた。

 「会社というものは、誰がどのようなビジョンを持って創業し、どのような理念のもとに育成するかによって大きく変わるものだと思います。ビジョンや理念は、むしろビジネスのアイデアや戦略よりも会社の体質や文化に大きな影響を与えるものです」

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