廃棄削減へ業界がワーキングチーム
商慣習見直しを検討、関係省庁連絡会議と連携[食品ロス]

コンビニの店舗で廃棄された食品(記事とは直接関係ありません)

 日清食品やイトーヨーカ堂、ファミリーマートなど食品メーカーや食品卸、食品小売業の16社がこのほど、売れ残って捨てられる食品を減らすため、業界横断の食品ロスに関するワーキングチームを初めて発足させた。実態調査を行ったうえで、来年3月、削減に向けた提言をまとめる。具体的には即席めんや缶詰など加工食品の過剰生産の是正や、賞味期限直前まで商品をコンビニやスーパーマーケットの店頭に並べることができるように商習慣を見直すことを検討する。食品関連業界が自ら商習慣を改め、食品ロスという社会的損失を減らす試みとして注目される。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、農産物を含む世界の食料生産の3分の1に当たる13億トンが毎年、過剰生産や賞味期限切れなどで食べられずに廃棄されている。これには売れ残りや食べ残しだけでなく、農場などで規格外となった農作物を捨てたり、豊作となって価格維持のため廃棄したりするケースも含まれているが、「食料生産の3分の1」という数字はショッキングだ。

 消費者が廃棄する年間1人当たりの食品ロスは、北米が115キロ、ヨーロッパが95キロに対して、南・東南アジアは11キロというFAOのデータもある。農水省によると、日本の食品ロスは年間1人当たり15キロという。問題となる食品ロスは途上国よりも、先進国の方が多いことがわかる。

 いずれにせよ、この大量の食品ロスが昨今の穀物需給の逼迫や食料価格の高騰に結びついている。このため欧州連合(EU)の欧州議会は食料廃棄物を2025年までに半減させ、発生を抑制するための具体的な行動を定めるよう欧州委員会やEU各国に要請した。欧州委員会は食品廃棄物の削減を含む「欧州資源効率化計画」を策定。欧州議会は14年を「ヨーロッパ反食品廃棄物年」と位置づけ、食品ロスを減らすための啓発活動を行うという。経済協力開発機構(OECD)は加盟国の食品廃棄に関する統計の収集と比較を行い、政策提言を行うことを目指すなど、食品ロスの削減は先進国の課題となっている。

 日本の農林水産省、消費者庁、内閣府、環境省は「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」を設立。食品業界と協力して食品ロスの削減を目指しており、今回のワーキングチームの発足も官民連携の取り組みの成果といえる。

 日本のコンビニやスーパーマーケットでは、なるべく賞味期限が長い商品を店頭に並べ、期限切れが迫った商品は早めに撤去することが商慣習化しているという。このため菓子、即席めん、調味料、缶詰など多くの加工食品は、賞味期限が近づくとメーカーや卸業者に返品される。

 加工食品の場合、業界全体で年間売上高の1%強に当たる約1100億円分がメーカーに返品され、「食べられるにもかかわらず、多くが廃棄処分されている」(業界筋)という。潜在的には、メーカーも小売業もこの損失分を前提に店頭価格を決めていると考えられる。

加工食品に「3分の1ルール」

 食品業界関係者によると、日本の加工食品は流通段階で「3分の1ルール」と呼ばれる商慣習がある。(1)食品メーカーが商品製造から小売店へ納入するまでの期間(2)小売店が店頭で販売する期間(3)商品が販売された後、賞味期限を迎えるまでの期間――は、おおむね3等分で設定されるという。具体例として、賞味期限9カ月の加工食品をメーカーが2月1日に製造した場合、このメーカーが卸業などを通じて小売店へ納入する期限は製造から3カ月後の5月1日で、小売店の販売期限は同じく3カ月後の8月1日となる。

 実際の賞味期限は11月1日まで3カ月あるのだが、8月1日を過ぎた商品は「賞味期限が近づいた古い商品」とみなされ、店頭から撤去され、メーカーなどに返品となる。11月1日までの残る3カ月は「実際に消費者が商品を購入し、家庭などに保管する期間」と考えるのだという。

 缶詰のように賞味期限が3年間と長い商品の場合は、賞味期限まで1年を切ると返品となる。3分の1ルールの適用は無駄が多いだけに、改善の余地は大きい。業界横断のワーキングチームは、このような商慣習に起因する食品ロス発生の仕組みを根本的に見直す方針だ。

 賞味期限が近づいた商品であっても、店頭に並べることは法的にはもちろん可能だが、「消費者は賞味期限の近づいた商品を敬遠する」(食品業界関係者)というのが現実で、消費者心理から生まれたのが今日の3分の1ルールともいえる。現実に商慣習を改めるのは困難も予想される。

 その困難を乗り越えるための第一歩として、ワーキングチームは「各業界が商慣習の実態把握に重点を置き、各業界の実態について情報交換するとともに、食品事業者にアンケート、ヒアリング調査を行い、商慣習の実態と論点を整理する」という。缶詰などの賞味期限の日付の表示も見直しの検討対象となる。現在の「2012年11月1日」などの表示を11月だけにしたり、「11月上旬」などと簡略化することも検討する。

 しかし、簡略化するだけでは「安全・安心」を求める消費者の反発も予想されるため、新たな工夫が必要となりそうだ。食品ロスの実態と改善方法、賞味期限の正確な意味を消費者に伝えることができれば、「モッタイナイと感じる消費者の共感を得られるのではないか」と関係者は期待する。そのためには表示方法の改善だけでなく、賞味期限が少なくなった商品でも安心して買ってもらえるよう官民あげてのPR活動も必要となりそうだ。

 ワーキングチームは10月3日に発足。食品メーカーから、味の素、江崎グリコ、キッコーマン食品、コカ・コーラカスタマーマーケティング、サントリー食品インターナショナル、日清食品、ハウス食品、マルハニチロ食品、雪印メグミルクが参加。食品卸売業からは国分、三菱食品、山星屋、食品小売業からはイオンリテール、イトーヨーカ堂、東急ストア、ファミリーマートが参加している。有識者の委員としては、明治大学専門職大学院の上原征彦教授、専修大学商学部の渡辺達朗教授が加わり、事務局は財団法人・流通経済研究所が務める。

 ワーキングチームは実態調査と意見交換を経て、来年3月に提言をまとめた後、来期の課題も指摘する。13年度も引き続き、食品ロス削減に向けた取り組みを続ける方針だ。 

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